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社説・コラム

核禁止交渉 不参加 広島市立大広島平和研究所 水本和実副所長に聞く

非核外交への信頼低下

 広島市立大広島平和研究所の水本和実副所長(核軍縮)に、「核兵器禁止条約」制定交渉会議への参加を見送った日本政府の対応について聞いた。(岡田浩平)

 日本政府は、核兵器保有国と非保有国の間を結ぶと言ってきた。非保有国の多くが集まる今回の会議は両者の違いを踏まえて橋渡しをする絶好の機会だった。にもかかわらず、具体案も出さず、ただ参加しないというのは役割を放棄している。非常に残念だ。非核外交を進める上で、非保有国や非政府組織(NGO)の間で日本への信頼は低下する。

 「禁止条約は両者の溝を広げる」「現実的な取り組みを積み重ねる」などの不参加理由は古典的な言い訳。聞き飽きた。一方、核軍縮にそっぽを向いているトランプ米政権へ配慮したか、圧力があったかした結果ではないか、とも受け取れる。

 日本は不参加でも、条約交渉自体に直接の影響はないだろう。条約では、具体的に禁止事項を定めるべきだ。その上で、核保有国や「核の傘」の下にある国々を段階的に巻き込みやすい工夫があっていい。

 政府が、各国の指導者に被爆地訪問を呼び掛けてきた点は評価できるが、そこで取り組みが途切れてはいけない。広島は、指導者たちが核兵器の非人道性を見て法的禁止に賛同してほしいから、受け入れている。訪れて終わりではなく、その思いに寄り添うよう、被爆地から一層の働き掛けが求められる。(談)

(2017年3月29日朝刊掲載)

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