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【解説】核禁止「先行条約」で一致 核保有国の参加不可欠 条約の実効性 次回へ課題

 核兵器を禁止し、全廃する初の条約を作る交渉は、違法行為を広く定める「禁止先行条約」を志向してきた非保有国が終始主導し、第1回を予定通り終えた。裏を返せば、反発を続ける保有国や、日本をはじめ「核の傘」の下にある国が不在ゆえの順調さだ。条約の実効性を高めるための方策をどう描くかが、次回に向けてポイントになる。

 開幕前には、核抑止政策を取る国が段階的に禁止に加われる「枠組み条約」を推す声が一部の反核非政府組織(NGO)にあり、日本をはじめ各国の政府に働き掛けた。しかし日本は実質交渉に不参加。北大西洋条約機構(NATO)加盟国で参加に踏み切ったオランダも提案はしなかった。

 会議では、禁止先行条約を支持する国が多い分、条約内容の細部まで立ち入る発言が出た。議場内だけをみれば「建設的な雰囲気」には違いない。

 一方、議場外では保有国の米英仏などが開幕に合わせた記者会見で「ボイコット」を宣言。核兵器廃絶へは保有国の条約参加が欠かせないが、改めて溝の深さを浮き彫りにした。

 その溝を乗り越えるべく、被爆国の市民社会が提案をし、存在感を示した。平和首長会議(会長・松井一実広島市長)は制定後の非加盟国との協議の仕組みを、別のNGOは前文に「ヒバクシャ」の言葉を記して条約の重みを増すよう訴えた。今、世界が求める保有国と非保有国の「橋渡し役」を果たそうとしている。それを自任しながら会場を去った被爆国政府の対応もまた問われ続ける。(ニューヨーク発 水川恭輔)

(2017年4月2日朝刊掲載)

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