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岩国搬入オスプレイ 飛行機モード 騒音拡散か

 米海兵隊岩国基地(岩国市)に搬入された垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ12機は、次の段階として試験飛行を開始する。国は「同基地の標準的な飛行経路」を使用するとするが、一部の飛行はこれを逸脱する懸念がある。岩国基地周辺自治体は飛行ルートや騒音・振動に注視する必要がある。(編集委員・山本浩司)

 オスプレイの試験飛行の内容は、米側が作成した環境審査報告書の「飛行場での運用」からうかがえる。それによると、同型機は①ローターを上向きにした離着陸モードでの離着陸とホバリング(空中停止)②垂直飛行③離着陸モード、ローターを斜めにした変換モード、ローターを前向きにした飛行機モードの三つの切り替え④水平飛行―で運用される。

 試験飛行では変換モードでの離着陸を繰り返すタッチ・アンド・ゴーも実施されるだろう。

 一方、国のいう標準的な飛行経路とは何か。2006年4月、当時の防衛施設庁が発表した「新滑走路運用開始後の航空機の騒音予測」に添付された図から見て取れる。

 図には、固定翼プロペラ機の離陸コースとともに、基地東側の海上を周回する経路が含まれている。南北約8キロ、東西約3キロの楕円(だえん)形で、うち直線部分は約6キロと推計できる。試験飛行のうち①②③はこの飛行経路で実施し、住宅街への騒音など影響は、限定的と考えられる。

 しかし、残る飛行機モードの水平飛行は、これを逸脱する可能性が極めて高い。米海兵隊太平洋基地(沖縄県)ホームページの同型機のガイドブック(英文)によると、最高巡航速度は時速485キロ。楕円の直線部分をわずか45秒で通過してしまう速度だ。

 基地周辺住民は、同型機の騒音を試験飛行で初めて知ることになる。岩国市など基地周辺自治体は、将来の本格運用に備え、試験飛行ルートと騒音、回転翼による振動のデータを収集する必要があるだろう。

 試験飛行を終えた後、普天間飛行場に向かい「10月からの本格運用」(米海兵隊)に向けての準備に入る予定だ。しかし、沖縄県民の反発は強く、普天間への配備実現は不透明である。

 このため岩国基地で長期間、暫定運用される可能性も消えていない。その場合は試験飛行に続いて、同基地を拠点に通常の訓練が実施される恐れが十分ある。

 米海兵隊は最近、環境審査報告書に記載がなかった中国地方の飛行経路「ブラウンルート」や訓練空域「エリア567」の存在を初めて認め、飛行訓練実施を示唆した。

 一方、米国の専門家は同型機の山間部での低空飛行について「天候の変化など操縦ミスにつながる要因が多くある」と警告する。住民は岩国基地周辺住民よりもはるかに高い危険性にさらされることを示唆する。

 関連する各自治体は、岩国基地での運用に備え、住民を通じたオスプレイ目撃、騒音・振動情報の収集と伝達システム構築が急務ではないか。

≪飛行モード≫

【垂直離着陸】
 ◇垂直離着陸:ヘリコプターのような機能をもつ。

【変換モード】
 ◇垂直離着陸モードから飛行機モードに変換する。

【飛行機モード】
 ◇ハイスピード
 ◇高高度
 ◇長距離
 ◇主な飛行形態は飛行機モード

(2012年8月5日朝刊掲載)

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