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ヒロシマの痛み共有 トルーマン元米大統領の孫 初訪問

 原爆投下当時の米国大統領トルーマンの孫クリフトン・トルーマン・ダニエルさん(55)=米シカゴ市=が4日、初めてヒロシマの地を踏んだ。広島市中区の平和記念公園を巡り、被爆者と対話。被爆の実態に触れ「核兵器は二度と使ってはならない」と繰り返した。(門脇正樹)

 中区のアステールプラザ。「今日は個人同士として、被爆体験を話しに来た」。日本被団協の岩佐幹三代表委員(83)は、そう前置きした。米国側の責任を問うことは避け、自宅の下敷きになった母親を残して避難した体験を淡々と語った。

 ダニエルさんは「怒りを抑え、家族を失った悲しみを話してもらえたことに感謝する。今すぐ核軍縮しなければ私たち自身の存在が危うくなる」と話し、岩佐さんと握手した。

 これに先立ち、ダニエルさんは、広島、長崎両方の原爆投下機に乗った唯一の米兵の孫アリ・ビーザーさん(24)=ロサンゼルス市=と、原爆慰霊碑に花をささげた。原爆資料館では、広島平和文化センターのスティーブン・リーパー理事長の説明を聞きながら見学。壊滅した街並みの模型ややけどを負った被爆者の写真に沈痛な表情で見入っていた。

 館内に備え付けた芳名録には「亡くなった方にも、生存された方にも敬意を払おう。二度と悲劇を起こしてはならない」とつづった。その後、原爆投下の是非について「歴史の本で『戦争の終結を早めた』と学んだが、さまざまな意見があり結論付けられない」と話した。

 被爆して白血病を患い、折り鶴に回復の願いを託しながら12歳で亡くなった佐々木禎子さんの兄雅弘さん(71)=福岡県=がダニエルさんとビーザーさんを招いた。3日に来日。6日の広島市の平和記念式典と9日の長崎市の平和祈念式典に参列する。

(2012年8月5日朝刊掲載)

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