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歴代米大統領演説 一冊に 広島市立大井上教授 日英対訳

 広島市立大国際学部の井上泰浩教授が、昨年5月に広島を訪れたオバマ氏をはじめ、歴代米大統領の演説の抜粋を日英対訳でまとめた「世界を変えたアメリカ大統領の演説」を出版した。

 1863年のリンカーンのゲティズバーグ演説、原爆投下後のトルーマン演説など20本。英語学習用だが時代背景も詳説し、歴史上の位置付けをひもとく。

 核と原爆投下国の関係も浮き彫りにする。アイゼンハワー氏は冷戦期の核軍拡競争を加速させながらも、1961年の離任時は軍需産業の膨張に警鐘を鳴らした。同年のケネディ氏の就任演説は「最終戦争」を避けるため対話を説いた。

 一方で井上教授は「戦後の演説でヒロシマやナガサキに触れたのは私が知る限りなかった」と言う。それだけにオバマ氏の広島演説は大変な決断であり、子どもを含む市民の犠牲に触れるなど原爆の被害を巡る米政府見解がいくつか修正されたのも特徴という。

 昨年12月に安倍晋三首相をハワイに迎えた際のオバマ氏演説とともに、91年にブッシュ氏が「(真珠湾攻撃に対する日本への)恨みはない」と述べた演説も収録した。現地の記念館の展示方針や米国内の世論が軟化する契機になり、オバマ氏の広島訪問の道を開いたと井上教授はみる。

 巻末には現役のトランプ氏就任演説もある。その評価は―。「語彙(ごい)力と語り口の両面で、誰より格調を欠く。後世もそう評価するだろう」。講談社刊、税込み1620円。(金崎由美)

(2017年4月17日朝刊掲載)

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