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上関原発に大半が反対の祝島 20年ぶり山口知事 訪問中止 予定地視察目的は否定

 山口県の村岡嗣政知事による中国電力上関原発(同県上関町)建設計画の予定地対岸約4キロの同町祝島への訪問は17日、荒天で中止された。祝島航路に就航する新造船の祝賀の一環だった。村岡知事は同町での式典後、「祝島をはじめ各地域の住民と祝いたかった。残念」と述べた。

 祝島は上関原発反対派が大半を占める。訪問すれば現職では1997年の二井関成知事以来20年ぶりだった。町によると渡航する午後の天候悪化が予想され、同日朝に中止が決まった。

 村岡知事は報道陣に、今回の訪問を「あくまで新造船のお祝い目的」とし、予定地の視察を兼ねたものではないと強調。上関原発については「町の方向性を踏まえ対応する。この件で個別に会う考えはない」と従来の姿勢を説明した。

 上関原発を建てさせない祝島島民の会の清水敏保代表(62)は「知事と島で祝うつもりだった。予定地との距離を見てもらえば、私たちの気持ちも分かるのではないかと思っていた」と話した。(井上龍太郎)

「島の姿 見てほしかった」 山口知事の祝島訪問中止 原発反対派、肩落とす

 現職では20年ぶりとなるはずだった村岡嗣政知事の上関町祝島への訪問は17日、荒天で中止された。祝島―柳井航路への新造船就航の祝賀の一環で組まれた予定だった。同町での中国電力上関原発建設計画への反対派が大半を占める島の住民からは「島を見てもらう一番良い機会だった」と、残念がる声も聞かれた。(余村泰樹、佐藤正明、井上龍太郎)

 建設予定地の西約4キロの祝島。新造船「いわい」に乗船した村岡知事を迎え、船着き場でお披露目と餅配りをする予定だった。だが昼にかけ、暴風雨でしけが悪化。中止の島内放送が流れ、餅は祝島公民館で配られた。

 「福島第1原発の事故後、原発への恐怖は消えない。知事には建設予定地が目の前にあることを実際に見てほしかった」。漁業男性(63)はこぼした。

 村岡知事は昨年8月、中電が申請していた建設予定地の海域を埋め立てる免許の延長を許可した。祝島住民はこの判断に強く反発。また、祝島の漁業者は免許の取り消しを求め、県を相手に山口地裁で係争中だ。

 住民は今回「祝いの日」として抗議行動を控え、島の暮らしや伝統建築「練塀(ねりへい)」を見てもらう考えだった。祝島自治会の木村力会長(69)は「いろんな意見はあると思うが原発の話をする場ではない」と説明。「来れば島を好きになってもらえたのでは」と惜しんだ。

 県幹部は「純粋なお祝い目的」と、知事訪問を予定した理由を強調した。村岡知事も式典後、原発に関連した意図はなかったとした。島への訪問について、「町から案内をいただければ、来る機会もできるかと思う」と述べるにとどめた。

乗船して祝えず残念 知事の一問一答

 村岡嗣政知事は17日、上関町総合文化センターで取材に応じ、中止となった同町祝島への訪問について説明した。主な発言は次の通り。(井上龍太郎)

  ―今回予定した訪問の経緯は。
 (柏原重海)町長から新造船の記念式典に招かれ、調整できたので来させてもらった。乗船して各港を訪ね、祝賀を共有したい思いだった。祝島は初めての機会だったし、行けなくて残念だ。

  ―祝島から(上関原発建設計画)予定地の距離を確認する狙いも兼ねていましたか。
 それはない。以前から原発については町で議論された町の方向性を踏まえ、対応するスタンスでいる。私自身の目というより、町の政策選択の話だ。

  ―祝島の住民には知事の訪問を望む声もあります。
 今回の趣旨があるのでそれに応じて訪れた。この件について住民と個別に会うことは考えていない。

  ―祝島を今後、視察に訪れる考えは。
 町から話があれば対応するかもしれないが今のところはない。

(2017年4月18日朝刊掲載)

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