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被爆樹木 問題4割 広島市161本調査「枯死寸前」なし

 広島市は18日、昨年度に実施した、市内の被爆樹木全161本の樹勢調査の結果を公表した。6割を占める95本は健全だが、4割の66本は生育状態に何らかの問題があると診断。今後、定期的に調査し、「物言わぬ証人」の保護に努める。

 樹木医の堀口力さん(71)に昨年6月からことし3月末まで調査を委託。枝葉の密度や樹皮の様子など12項目について目視で点数評価し、5段階で衰退度を判定した。特に問題ないとされる「良」と「やや不良」が計95本と59%に上った。一方、衰退が進んだ「不良」と「著しく不良」は計66本で41%を占めた。最も状態が悪い「枯死寸前」はなかった。

 「著しく不良」とされたのは9本。うち中区小町の平和大通りに植わるムクノキ(高さ13メートル)は、爆心地から約530メートルの現在地で被爆した。樹皮がめくれて欠損や枯死した部分が目立つ状態だ。ただ、所有する市は、この木を含め「緊急に樹勢回復の対応が必要な樹木はない」とみる。生育状態に被爆がどう影響しているかは分からないという。

 市はまた、これまで単発で実施していた樹勢調査を、来年度以後は計画的に進めるため調査頻度を設定。今回の診断結果に、病気や害虫の有無などを加味し、5年ごとが74本、3年44本、2年37本、毎年6本とした。

 市は1996年度から、爆心地約2キロ以内で被爆した樹木を登録。現時点で84本を市が、残る77本を寺社や国、県などが所有する。市平和推進課は「市以外の所有者にも樹木別の調査結果を提供して保護の意義を伝え、適正な維持管理に役立ててもらう」としている。(野田華奈子)

<被爆樹木の樹勢調査結果> (※単位は本)

             判定
             良  やや不良  不良 著しく不良 枯死寸前
所有者 広島市     10   35   36   3     0
    国・広島県    1    8    6   3     0
    寺社など     9   32   15   3     0
    計       20   75   57   9     0

(2017年4月19日朝刊掲載)

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