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被爆二世のヒガシダさん 平和の祈り芸術に宿す

■記者 下久保聖司

 東広島市八本松東を拠点に活動する被爆二世の芸術家、ゼロ・ヒガシダ(本名上田翼龍)さん(50)が、広島市中区の平和記念公園に飾られた折り鶴を溶かした再生紙で、平和をテーマに作品づくりを進めている。

 母が広島市で被爆し、ゼロさん自身も2001年にスタジオを構える米ニューヨークで中枢同時テロを目撃。「平和と命」を創作命題にしてきた。

 折り鶴には、以前から思い入れがあった。平和記念公園にある原爆の子の像のモデルになった佐々木禎子さんは、幟町中(中区)の先輩。面識はないが「自分なりに、折り鶴で平和の思いを表現したいと思っていた」

 再生紙は、広島市を拠点にする特定非営利活動法人(NPO法人)「おりづる広島」に提供してもらい、既に何点か絵を描いた。

 東広島市の広島大前にある西条HAKUWAホテルで20日から25日まで開かれた個展「平和のアプローチ展」でも、絵画8点とともに、国際的に評価が高い金属性オブジェも11点展示した。

 作品の1つに、ピュリツァー賞を3回受賞した米国の劇作家、エドワード・オールビーさんの姿をイメージした抽象画がある。07年に対談し、平和についてのオールビーさんの言葉に感銘を受けた。

 「平和は常に実現可能である。人々がそれを意識し、それを望むのであれば。もしそうでなければ、この世の滅亡は自明だ」と。

 ゼロさんは来年3月に横浜市である個展に向け、創作を続けている。折り鶴再生紙に絵を描くほか、これまで創作した金属製オブジェの鋳型に、液状にした紙を流し込む。

 「世界から寄せられた平和の祈りを循環させたい」。原爆投下と9・11テロ、2つの「あの日」を背負う芸術家は、一種の使命感のように語った。

(2008年11月21日朝刊掲載)

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