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米から慰霊の水筒 日系3世贈る

 原爆投下時、広島二中(現観音高、広島市西区)2年生だった塚本昭さん(81)=府中町=の元に、米国から慰霊の思いを込めた水筒が届いた。贈り主はカリフォルニア州在住の日系3世、金本光司さん(58)。塚本さんたちの被爆体験をまとめたホームページ(HP)を見たのがきっかけだった。塚本さんは6日、この水筒で広島二中原爆慰霊碑(中区)に献水する。(田中美千子)

 水筒はステンレス製で縦10センチ、横8センチ。「Nichuu High School August6 1945」と刻まれている。

 金本さんの父康三さん(93)は州内の高齢者福祉施設で暮らす。金本さんは寡黙で過去をあまり語らず、物忘れも進んだ父の人生に触れたいと思い立った。

 日本の教育を受けるため広島に滞在していたことと、「廣二中」と裏書きされた旗の写真だけが手掛かり。ほどなく塚本さんたちのHPにたどり着いた。

 塚本さんは5月、金本さんの問い合わせを受け、康三さんが1937年の卒業生と確認。当時の卒業アルバムを電子文書にしたCDを贈った。金本さんは「父が写真を眺めながら思い出を語り、校歌も歌った」と喜ぶ。

 一方、金本さんは建物疎開の作業中だった同校1年生全員が犠牲になったと知った。勤労作業中に塚本さんが被爆したことも。水筒を贈ったのは「犠牲者を弔うため杯を重ねてほしいから」という。

 塚本さんは「遠く米国から寄せられた思いを犠牲者に報告したい」と話している。

(2012年8月6日朝刊掲載)

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