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被爆67年式典 核と人類 見つめ直す 広島市長平和宣言

 広島市は6日、中区の平和記念公園で原爆死没者慰霊式・平和祈念式(平和記念式典)を営んだ。米国による原爆投下から67年の「原爆の日」。被爆地は犠牲者の追悼と平和への願いに包まれた。松井一実市長は平和宣言で、市民の暮らしと安全を守るためのエネルギー政策の早期確立を政府に求めた。平和利用の是非に揺れる「核の火」を見つめ直す一日となった。(城戸収)

 午前8時、開式が告げられると、松井市長と遺族代表2人が原爆死没者名簿を原爆慰霊碑に納めた。この一年で亡くなったか、新たに死亡が確認された被爆者は5729人。名簿は2冊増えて102冊になり、28万959人の犠牲を刻む。

 原爆投下時刻の午前8時15分。遺族代表の会社員原戸勇二さん(42)=安佐北区=と、こども代表の八幡小6年岸本聖来(せいら)さん(11)=佐伯区=が突く「平和の鐘」が響く中、参列者は黙とうをささげた。

 平和宣言で松井市長は、公募で選んだ被爆者3人の体験談を引用。「核兵器の非人道性を訴え、廃絶に尽力してきた被爆者の切なる願いを世界に伝えたい」と訴えた。

 福島第1原発事故を教訓にしたエネルギー政策の確立を政府に求めた。ただ、原発の是非には踏み込まなかった。政府には、原爆投下直後に降った「黒い雨」の指定地域拡大で政治判断を迫った。

 東日本大震災と原発事故の被災者が前向きに生きようとする姿を67年前に被爆したヒロシマに重ね、「私たちの心は皆さんと共にある」と力を込めた。

 続いて、こども代表による「平和への誓い」。比治山小6年三保竜己君(11)=南区=と安北小6年遠藤真優さん(12)=安佐南区=が「平和をつくり続け、仲間とともに行動していく」と誓った。

 野田佳彦首相はあいさつで「被爆体験の『記憶』を国境を越え、世代を超えて確実に伝承する取り組みを後押しする」と訴えた。

 福島県からは、全町避難を余儀なくされている浪江町の馬場有(たもつ)町長が出席した。核保有5カ国のうち、中国を除く4カ国の代表が参列。英国、フランスは初めて駐日大使が訪れた。

平和宣言の骨子
・「原爆で失われた広島の市民生活」をテーマに被爆者3人の体験談を引用し、核兵器廃絶の願いを世界に伝え、共有する
・核兵器保有国に対し、平和について考えるため広島を訪れるよう訴える。日本政府には核兵器廃絶のリーダーシップの発揮を求める
・日本政府に対し、市民の暮らしと安全を守るためのエネルギー政策を一刻も早く確立するよう訴える
・広島原爆で降った「黒い雨」の指定地域拡大に向けた政治判断を要請する
・原爆犠牲者に哀悼の意をささげ、核兵器廃絶と世界恒久平和の実現を誓う

(2012年8月7日朝刊掲載)

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