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本館 最終日も人波 広島の原爆資料館 耐震工事 市街模型・人形 見納め

 原爆資料館(広島市中区)の本館は、休館前最終日の25日も、多くの旅行者や修学旅行生が訪れ、「あの日」の惨禍を伝える被爆者の遺品や写真に向き合った。被爆直後の市街地のジオラマ模型や被爆者の姿を表した人形は、常設展示では見納めとなった。(長久豪佑、野田華奈子)

 昨年のケリー米国務長官(当時)をはじめ、多くの「要人」が訪れてきた本館。この日も午前中にバングラデシュ独立戦争省の一行18人が諏訪良彦副館長の案内でジオラマ模型などを熱心に見学した。同省のモザメル・ハック大臣は「残虐性を目の当たりにし、大きな衝撃を受けた。被爆者は今も影響に苦しんでいる。この攻撃を糾弾する」と芳名録に書いた。

 午後6時の閉館まで混み合い、がれきの町をさまよう被爆者の人形3体の前にも絶えず人だかりができた。人形は、今回の耐震化工事に伴う展示の全面見直しで、「実物」重視を打ち出した市側が2013年に撤去方針を決定。今後も保管されるものの、常設展示はされない。奈良市の会社員岡山久子さん(64)は「不安定な国際情勢だからこそ、核兵器被害の悲惨さが一目で分かる人形を国内外の人に見てほしかった」と語った。

 本館は耐震工事に入り、18年7月の開館を目指す。この間は、破れたワンピースや弁当箱といった被爆者の遺品を東館1階の企画展示室で公開。遺族の手記と並べるなど犠牲者一人一人に焦点を当てる。平面展示の多い衣類の一部は「人が着ていた状態を想像しやすいように」と40度の角度がついた台に載せた。「いろんな方の生きた証しを紹介しながら展示方法を試行し、本館にも取り入れたい」と資料館学芸課。資料を定期的に入れ替える。

 資料館のボランティアガイドとしてこの日も活動した尾崎美栄子さん(61)=東区=は東館の新展示がCG技術などを使っているのを踏まえ「平和を願う心を子どもたちに伝えるなど、機械にできない役割を今後も担いたい」と力を込めた。

(2017年4月26日朝刊掲載)

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