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社説・コラム

天風録 「地下街とミサイル」

 きのう広島市中心部の地下街は普段より人通りが多かった。大型連休スタート。買い物に大勢が繰り出したらしい。中にひょっとすると「地上を歩くのは不安」という人もいただろうか▲ミサイルが飛んできたら…。屋外ならば「地下街や頑丈な建物へ」、屋内は「窓から離れて」。身の守り方を国がホームページで指南する。近くに落ちたら、口と鼻を覆い風上へ。危急のさまは70年余り前の戦時下を思わせる▲杞憂(きゆう)とは笑えないようだ。またもや北朝鮮が弾道ミサイルを撃った。空中で爆発したらしく日本に被害はないが、地下鉄などは運転を一時見合わせた。米軍の空母がいよいよ日本海に入った。じりじり狭まる包囲網に焦りを感じての一手か▲衝突の不安が日に日に増す。くだんのホームページも閲覧数がぐんぐんと。猛毒サリンを仕込んだミサイルも迎撃すれば大丈夫らしいが、核弾頭だったら。東京、ソウルには現実の脅威があるという。地下街では身を守れまい▲互いにけん制し合い、戦争を避ける道を狭めているように映る。最大の安全策は何といっても、北朝鮮に思いとどまらせること。核開発を対話によって放棄させたい。手を尽くす時間はまだある。

(2017年4月30日朝刊掲載)

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