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ペンの責務 誓い新た 朝日新聞阪神支局襲撃30年 社長ら呉で墓参り

 1987年の朝日新聞阪神支局襲撃事件から30年を迎えた3日、犠牲になった小尻知博記者=当時(29)=の古里、呉市川尻町を朝日新聞社幹部が訪れ、墓参りをした。親族や幼なじみたちも小尻記者をしのんだ。

 瀬戸内海を望む墓に、小尻記者と同期の渡辺雅隆社長(58)たち7人が手を合わせた。渡辺社長は「自分と相いれない他者を排除する風潮は30年前よりも強まっている。異なった価値観や意見を認め合う社会の実現がメディアの仕事だ。ペンを握り直し、責務を全うする」と墓前に誓った。これに先立って、事件当時、現場に居た高山顕治記者(55)も墓に参ったという。

 父信克さんは2011年、母みよ子さんは15年に亡くなった。同町の叔母林知津子さん(83)は「なんで知博を、という気持ちは30年たっても変わらない」と無念さを募らせる。

 小尻記者は中学時代まで同町で過ごした。川尻中の同級生、製造業平野和之さん(59)は「犯人への憤りを感じ続けてきた。真実が知りたい」。還暦を迎える同級生はことし、小尻記者の分も祝う計画だという。

 川尻中で技術家庭科を指導した山岡壮吾さん(69)=広島市安佐北区=は「言論の自由が守られない社会は安心安全とは言えない。事件を風化させてほしくない」と願う。(見田崇志、今井裕希)

朝日新聞阪神支局襲撃事件
 1987年5月3日午後8時15分ごろ、兵庫県西宮市の朝日新聞阪神支局で男が散弾銃を発砲。小尻知博記者=当時(29)=が死亡、同僚記者1人も重傷を負った。報道機関に「赤報隊」を名乗る犯行声明文が届いた。警察庁は朝日新聞東京本社銃撃など一連の事件を広域重要116号事件に指定したが、2003年3月までに全ての事件の時効が成立した。

(2017年5月4日朝刊掲載)

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