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「ケア物資」受取人は今? 終戦後 広島などに米組織が送付 記憶継承へ協力訴え

 第2次世界大戦後、米国の人道支援組織から日本などの戦災地へ送られた「ケア物資」の記憶を掘り起こそうと、公益財団法人ケア・インターナショナルジャパン(東京)が、受け取った人を捜している。証言を聞き取り、記録に残すためだ。原爆で壊滅的な被害を受けた広島は受給者が多かったとみられ、戦後の子どもが写った写真も残る。被爆地からの協力を求めている。(田中美千子)

 ケア物資は、米国の宗教団体や労働団体でつくる「対欧送金組合(ケア)」が、食料品などの物資を詰めて戦災地に届けた小包。1946年、ドイツ、フランスなど欧州向けから送付が始まり、日本には48~55年、広島や東京、沖縄などに送られた。

 さまざまな種類があり、食料品は缶詰や小麦粉、砂糖を詰めた標準セットのほか、粉ミルクなどが入った乳幼児向けがあった。布地と裁縫道具、農具と作物の種など、生活の立て直しに役立つ品もあった。趣旨に賛同した米国などの個人や団体が、種類を選んで代金を納めれば、指定先に送られる仕組みだった。代金は低価格で、親戚や知人に送るのにも利用された。

 受給者は日本だけで1千万人に上るとされるが、リストなど詳細な記録は残っていない。ケア・インターナショナルジャパンは途上国支援に取り組んでおり、広報の甲斐博子さん(44)は「活動の原点には、戦後の窮乏を海外からの援助に救われた恩を返そうとの思いがある。支え合いの精神を次代に伝えるためにも証言を集めたい」と話す。戦争体験者は高齢化が進んでいるため、聞き取りを急ぐ。

 集まった証言はインターネット上で公開し、冊子化も検討する。同法人Tel03(5950)1335。

(2017年5月9日朝刊掲載)

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