×

社説・コラム

天風録 「光化門の大統領」

 革新、左派、進歩系。きのうの新聞各紙に躍っていた見出しである。韓国の新大統領に文在寅(ムン・ジェイン)氏が就任した。その政権の「冠」は社によって微妙に判断が分かれたのだろう。いずれにせよ、日本の政権交代とは勝手が違う▲むしろ「在野」という2文字が似合うだろう。文氏は選挙中に「私は光化門の大統領になる」と約束した。青瓦台(大統領府)にこもりきりだった朴槿恵(パク・クネ)氏を皮肉り、私にはソウル中心部の光化門広場でいつでも会える―と聴衆を沸かせたのである▲かの国では、かつて2人の大統領の独裁に抵抗したのが、在野の勢力だった。それは必ずしも政党の形は取らず、道義にもとる政治を批判して民主化を求めた▲文氏もその流れをくむ人だろう。生い立ちは貧しく、学生時代には反政府デモを主導したとして逮捕された。その後は運動の傍ら、法曹を志す。もっとも文氏も弁護士仲間の盧武鉉(ノ・ムヒョン)氏が大統領になるや、青瓦台入りし、側近として仕えた時代がある▲在野も時代に合わせて生きてきたのが韓国の民主主義かもしれない。民意が選択した隣国の元首にまずは敬意を表した上で、核兵器なき東アジアの実現のため言うべきことは言わせていただく。

(2017年5月11日朝刊掲載)

年別アーカイブ