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社説・コラム

『記者縦横』 基地情報もっと開示を

■岩国総局・馬上稔子

 「岩国基地で黒煙が上がっているようだ」。4日午後に受けた電話に肝が冷えた。急いで岩国市中心部のビル屋上から確認したが煙は見えない。米海兵隊岩国基地(岩国市)の報道部も「トラブルがあったとは聞いていない」との回答。消防や警察に聞いても詳細な情報は得られなかった。

 後で分かったが、黒煙は翌5日の基地開放イベント「フレンドシップデー」に向けた海兵空陸任務部隊(MAGTF)のリハーサルでの模擬爆撃が原因。基地側は「毎年やっているし、コントロールされたもの」とする。ただ基地の外から見ていた人たちのツイッターなどでは「草に引火した」「火災ではないか」との情報が行き交った。

 当日は約21万人(基地発表)が来場。最新鋭ステルス戦闘機F35BやE2D早期警戒機の展示、計6時間近くの航空ショーを多くの人が楽しんでいた。海兵隊員たちも笑顔で記念撮影に応じるなど、基地側ができる限りオープンでいようとする姿勢もうかがわせた。ただ、日々の基地取材で、米軍側から「運用上の理由で答えられない」と回答されることも少なくない。

 新機種の配備や、北朝鮮情勢の緊迫化、米計画で7月にも始まる海軍厚木基地(神奈川県)からの空母艦載機移転…。岩国基地を巡る大きな局面を迎える中、市民は隣にあって見えないからこそ不安を募らせる。不安を少しでも軽減するためにも、米軍側は細かな情報を今以上に積極的に開示する努力をしてほしい。

(2017年5月12日朝刊掲載)

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