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社説・コラム

『潮流』 基地の街の「メール」

■岩国総局長・小笠喜徳

 さまざまなメール情報サービスや、スマートフォン・アプリの通知サービスを使っている。カープやサンフレッチェの試合結果に一喜一憂したり、「雨雲接近中」の通知に慌てて洗濯物を取り込んだり。

 とはいえ、大概の情報はスマホの画面をちらりと見て、それで終わりだ。ところが、4月25日朝、岩国市からのメールに目を見開いた。タイトルには「弾道ミサイル落下…」とあった。

 北朝鮮情勢が緊迫しているさなか。このメールの直前には米空母と海上自衛隊の共同訓練がフィリピン海で始まり、この日は朝鮮人民軍の創設記念日。北朝鮮がアクションを起こす可能性が指摘されていただけに、なおさらだった。

 北朝鮮の朝鮮中央通信は3月に「在日米軍基地が攻撃対象」と報じた。米海兵隊岩国基地は、直線距離で最も近い在日米軍基地の一つである。メールはミサイル落下時に取るべき行動の案内だったが、基地の街の現実を再認識させられた。

 そんな緊迫した情勢がうそのように、岩国基地が開放された5日の「フレンドシップデー」は、好天と2年ぶりの航空自衛隊のブルーインパルスの登場、米国外では初配備のF35Bの展示などもあり、実に21万人もの観客が来場した。「ミサイルの危険が本当にあるなら、中止するはずだ」。知人はそんな独自の安全基準観を披露し、日焼けして帰って行った。

 彼のように「基地があるから危険も察知でき、安全性は他都市より高い」という人もいれば、「基地があるから狙われる」という人もいる。どちらが正しいのかよく分からないが、住民としては米国と北朝鮮の動静に敏感にならざるを得ない。異常なことだと思う。

 14日早朝のミサイル発射は、ニュース速報メールで知った。通知音に冷や汗をかき、振り回される日々が続くのはたまらない。

(2017年5月16日朝刊掲載)

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