×

ニュース

被爆直後 広島市水道部技手の奮闘 映像でたどる アマ作家 ドキュメンタリー制作進む

写真や日誌…人柄も紹介 11月披露へ

 広島市東区のアマチュア映像作家上田道明さん(74)が、原爆に耐え市民に水を届けた市水道の「不断水」をテーマにドキュメンタリー作品を作っている。被爆しながらも断水を防いだ市水道部(現水道局)の技手、故堀野九郎さんにスポットを当て、証言や関係資料を織り交ぜて伝える。

 広島駅の近くで被爆した堀野さん。牛田浄水場まで歩いてたどり着き、配水池の水がなくなる前に送水ポンプを復旧させた。約15分間を予定する映像は、修理したポンプの写真や日誌を紹介し、午後には配水池への送水を再開した様子などを振り返る。同局の紙芝居「命の水 ひろしま水道物語」の一部も引用した。

 堀野さんの孫2人にインタビューし、「謹厳実直だった」など人柄も紹介。市民の感謝の思い、現在の水道局職員が水を届ける責任感を引き継いでいる証言も収めている。

 上田さんは元警察官。退職後、市内の映像教室で撮影や編集を学んだ。平和に関心を寄せ、これまでに広島電鉄の被爆電車、袋町国民学校の児童の疎開などを取り上げた作品約30本を作った。

 2015年11月、自宅に近い牛田浄水場を見学した際、職員から不断水の話を聞き、「地元の人にも知られていない」と制作を決めた。水道局から資料提供を受け、証言集めに奔走したという。

 11月、所属するアマチュア映像作家グループ「広島エイト倶楽部(くらぶ)」の上映会で披露する。上田さんは「命を顧みずに奮闘した人たちがいた。その尊い事実を後世に伝えたい」と話している。(渡部公揮)

(2017年5月24日朝刊掲載)

年別アーカイブ