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核廃絶へ宣言・決議 原水禁・協 長崎で世界大会閉幕

 長崎市で開かれていた原水禁国民会議などと日本原水協などの二つの原水爆禁止世界大会は9日、それぞれ締めくくりの集会を開いた。核兵器廃絶を訴える宣言や決議を採択し、世界大会の全日程を終えた。

 原水禁などのまとめ集会は長崎県立総合体育館であり、約2千人(主催者発表)が参加。藤本泰成事務局長は「脱原発は経済成長一辺倒を転換し、命や生き方を考える社会変革。国は新しい政策を示す責任がある」と強調した。

 原発の新規計画の中止と既存原発の廃炉▽「核の傘」政策からの脱却▽被爆者支援の強化―を柱とする宣言を採択。終了後、爆心地公園まで約1・2キロをデモ行進した。

 長崎市公会堂であった原水協などの全体集会には、約1700人(同)が集まった。核兵器禁止条約の交渉開始や、核兵器使用の被害と非人道性を世界各国に訴える決議を採択した。

 大会運営委員会の野口邦和代表は「国際署名や原爆写真展の普及、原発依存からの脱却を求める運動と連携しよう」と訴えた。(加納亜弥)

大会総括

脱原発の路線鮮明 「核兵器」とどう結び付け

 9日に閉幕した二つの原水爆禁止世界大会は福島第1原発事故や関西電力大飯原発(福井県おおい町)の再稼働を踏まえ、脱原発路線を鮮明に打ち出した。核の平和利用を取り巻く市民の関心が高まる今、その流れを核兵器廃絶の機運の醸成にどうつなげていくかが課題になる。

 被爆60年を機に、連合、核禁会議との共催で世界大会の幕開け行事を開いてきた原水禁。3団体で原発へのスタンスが異なるため、ことしは独自の集会を開き、脱原発の活動方針を確認した。

 昨年の大会で初めて「原発からの撤退」を決議した原水協。今回、原発や放射線被害の根絶をテーマにした分科会を新たに盛り込んだ。原発ゼロに動くドイツからの報告や、全町民が避難を強いられている福島県浪江町の馬場有(たもつ)町長の講演は、立ち見も出る盛況ぶりだった。

 脱原発をテーマにした議論が活発だった一方、脱原発というスローガンの空文化を懸念する声も出始めた。広島県原水禁の金子哲夫常任理事は「原発に絡む雇用や放射性廃棄物の処理問題など国民の不安があるのは事実。その解決策も提示しなければ」と話す。

 脱原発や再稼働反対を求めて首相官邸を取り巻くデモは、これまで声を上げなかった市民を巻き込み、被爆地広島、長崎でも定着し始めた。

 こうしたデモの参加者には既存の原水爆禁止運動を敬遠する傾向がある。政党色や、運動が分裂した経緯が背景にある。核兵器と原発を「核被害をもたらす意味では同じ」とみる人がいる一方、「核兵器廃絶という主張は生活から縁遠い」との声もある。

 原水禁運動が今後、多くの市民の共感を得るためには、脱原発に向けた道筋を打ち出す説得力、国を動かす実行力が必要だろう。運動の原点である核兵器廃絶に向けた世論を盛り上げる一歩になる。(加納亜弥)

(2012年8月10日朝刊掲載)

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