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中国残留邦人 境遇を番組に 広経大生4人 市内在住者に聞き取り

「翻弄された歴史 語り継ぐ」

 広島市に住む中国残留邦人の体験や暮らしを伝えるドキュメンタリー映像の制作に、広島経済大(安佐南区)の学生4人が取り組んでいる。11月に大阪府吹田市であるコンクールへの出品を目指し編集作業を進める。「国家に翻弄(ほんろう)された残留邦人の存在を、僕たちの世代が語り継ぐ」と誓う。(栾暁雨)

 4人はメディアビジネス学科の4年生で、ディレクターを藤本益之介さん(21)=西区、カメラマンを堀晴輝さん(21)=廿日市市=が務める。中区基町地区に残留邦人が多く暮らしていると知り、制作を企画した。

 昨年10月から取材を進めてきた。基町地区の高層アパートや、近くの市中央公民館などを週1回程度訪問。市内の残留邦人と家族でつくる市中国帰国者の会(中区)のメンバーを中心に約10人から聞き取りを重ね、うち3人の体験談を映像に収めた。

 中国東北部の黒竜江省から1996年に帰国した70代の女性は、戦争末期の混乱で家族と離れ、中国人の養父母に育てられた。「50代で帰国したため日本語が不自由。社会になじめず、疎外感や偏見を感じる」と語った。

 インタビューに加え、日常の暮らしぶりや中国の旧正月「春節」を祝う会で地域住民と交流する様子なども撮影。撮りためた約85時間に上る映像は、約30分の番組にまとめる予定だ。

 藤本さんは「中国残留邦人が広島でも大勢暮らしていると最近になって知った。若い人が歴史に触れられる作品に仕上げたい」と話す。

 厚生労働省によると全国の残留邦人の平均年齢は75歳を超え、高齢化が進む。母親が残留邦人で、帰国者の会副会長の松山鷹一さん(51)=中区=は「体験を語れる人が年々減り、危機感を募らせていた。関心を持ってくれる若者がいるのは心強い」と歓迎する。

中国残留邦人
 第2次世界大戦末期の混乱で旧満州(中国東北部)に残った日本人。1932年の旧満州の建国以降、「満蒙(まんもう)開拓団」として国策で派遣された。国は81年から残留孤児を日本に招いて肉親を捜す事業を始めるなど、希望者の帰国を支援している。残留邦人をサポートする中国・四国中国帰国者支援・交流センター(広島市南区)によると、昨年12月末時点で県内には162人。うち広島市が最多の127人を占める。

(2017年5月31日朝刊掲載)

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