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被爆樹木の笛 寄贈に幕 安芸区の香原さん 材料確保難しく

千田小に3年間で95台

 千田小(広島市中区)にあった被爆樹木「カイヅカイブキ」を笛のパンフルートに再生する取り組みが、近く終わる。2014年の開始から3年がたち、材料の角材を取り出せなくなったためだ。パンフルートを制作してきた香原良彦さん(69)=安芸区=が27日、この1年間で作った最後の45台を同小に寄贈する。

 カイヅカイブキはヒノキ科の常緑針葉樹。原爆の惨禍を乗り越えて高さ6メートルほどに育ち、児童や修学旅行生たちに原爆の被害を伝えてきた。樹木医に「寿命」と診断され、倒木の恐れもあった14年9月に切り倒された。

 パンフルート工房を営む香原さんは、知人を通じ、庄野英憲校長から楽器への再生を依頼された。「被爆樹木は強いメッセージ性を持っている。楽器にすれば、永く後世に残せる」と快諾した。

 樹木から角材を取り出し、円柱状に加工。中をくりぬいて筒を作る。長さの異なる筒をアーチ状につなげて仕上げる。子ども用は10~20センチの10本を組み合わせ、18音が出せる。

 昨年までの2年間で50台を作り、同小に贈った。27日に寄贈する45台は、音色の最終調整をしている。「子どもたちの顔を思い浮かべながら作っている。いい音が出るように仕上げたい」と語る。

 パンフルートは、同小の課外クラブの合唱隊が、校内での「平和のつどい」や地域の敬老会などで演奏する。卒業した児童が作詞作曲した「アオギリのうた」の伴奏などに用いる。香原さんは「平和の尊さを伝える楽器として、受け継いでいってほしい」と願う。(山川文音)

(2017年6月3日朝刊掲載)

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