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被爆体験語り手150人 原爆資料館 初の実態調査 減少裏付け 記録に力

 広島市内の団体に所属して被爆体験を語り継ぐ活動をしている被爆者の実数が、少なくとも150人であることが、原爆資料館(中区)の初の実態調査で分かった。被爆者が減って高齢化も進み、体験を聞く機会が貴重となる中、体験記の執筆や証言の映像収録を呼び掛け、次世代への継承に力を入れる。(野田華奈子)

 証言活動に取り組む広島市の16団体と廿日市市の1団体を対象に昨年9月、2015年度に1回以上証言したメンバーを実名で尋ねた。その結果、広島市の15団体に106人がいた。別に広島平和文化センター(中区)に登録している「被爆体験証言者」が44人だった(いずれも重複者を除く)。生年月日を答えた人で最高齢は95歳。残る広島市と廿日市市の各1団体は該当者がなかった。

 さらに、各個人について証言ビデオ(団体作成の映像なども含む)の収録と被爆体験記や手記の有無も照会。各団体からの回答を基に資料館が調べた結果、ビデオは150人のうち55・3%の83人が収録している一方、残る67人は「収録なし」か「不明」だった。体験記は82・0%に当たる123人が残していた。

 資料館啓発課は「これまで証言者は約200人とみていたが、今回の調査で減少していることが裏付けられた」と分析。各団体に5月初旬、資料館が実施している証言ビデオの収録や、国立広島原爆死没者追悼平和祈念館(中区)が被爆体験記を代筆する事業の活用を呼び掛けた。

 市によると、市が被爆者健康手帳を発行している被爆者は3月末時点で5万3340人。この10年で2万4771人減少した。平均年齢は80・9歳。原爆資料館の諏訪良彦副館長は「各団体とも、いずれは被爆者の体験を継承できなくなる不安を抱えている。体験を後世に残すのに事業を活用してほしい」と話している。

(2017年6月6日朝刊掲載)

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