×

ニュース

反戦の志 「母子像」に込め 四国五郎の詩画集 復刻出版

 広島市を拠点に反戦・平和を訴える画業に生きた四国五郎(1924~2014年)。評伝の刊行など再評価の動きも広がる中、初の作品集として1970年に出た詩画集「母子像」が有志の手で復刻出版された。

 サークル誌「われらの詩(うた)」などで峠三吉らと活動した詩人としての四国に、あらためて光を当てる復刻だ。

 母子像は、四国が「戦争を頂点とする非人間的行為」に対する怒りと抵抗の象徴として、最も熱意を注いだモチーフ。ベトナム戦争を時代背景に、詩と絵に託したたぎる思いを、真っ赤な表紙など体裁も初版通りに再現した。B5判変型、132ページに40編余りの詩を収め、油絵(モノクロ印刷)や素描を挿絵状に織り込む。

 表題作の詩「母子像」は、「ひろしまの片すみで」「黒いベトナム服の母子像を」描く自身を詠む。自我の表現を後回しにするのもいとわなかった、画家としての姿勢を映す一節が続く。

 「ぬりかさねる絵具が/おもわぬマチェールをみせようと/ぼくはそれを削りおとさねばならぬ(中略)走る筆の/線の/色の/面の/すべての魅力が/たとえば/ひろしまのぼくと/ベトナムの母子とのつながりを抽象するなら」

 被爆死した弟へ痛切に呼び掛ける詩「弟への鎮魂歌」や、自身の戦争体験やシベリア抑留の記憶に向き合った詩、母や妻子に寄せた詩も。「ラオスの水田」や「キューバのきび畑」「コンゴのウラン鉱」「アルジェリアの砂漠」に言及する視野も印象的だ。

 初版は「広島詩人会議」の編集発行。絶版で入手困難になっていたが、市民有志でつくる「四國五郎追悼の会」が復刻した。詳細な年譜なども付録の小冊子に収める。同会の池田正彦さんは「戦争やその火種が世界に絶えない今、この詩画集に学ぶべきことは多い」と話す。

 1200円(送料300円)で頒布している。同会☎082(291)7615。(道面雅量)

(2017年6月16日朝刊掲載)

年別アーカイブ