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肖像写真撮影 原爆苦悩訴え 米在住27歳阪口さん 「正当化の風潮変えたい」

 米ニューヨーク在住の写真家、阪口悠さん(27)が、広島市中区の平和記念公園周辺で、被爆者や被爆2世の肖像写真を撮影している。長崎市での撮影分と合わせて米国で展示する計画で、「戦争を終わらせるために原爆投下は必要だったと正当化する米国内の風潮を変えたい」と願う。広島市には20日まで滞在する予定で、撮影に協力してくれる人を募っている。(新谷枝里子)

 黒色を背景にモノクロ写真を撮影する。次の世代に伝えたい平和のメッセージも寄せてもらう。肖像と英訳付きのメッセージを米国で展示する計画。原爆の日を迎える8月上旬ごろまでに、一部をインターネット上などで先行公開する準備も進めている。

 大阪で生まれ、生後3カ月で両親と渡米した。中学校の歴史の授業で原爆について学んだが、現地の教科書にあった記述は数行だけ。「日本を自由に導くための手段だった」との説明に「日本人として納得できない思いを抱えた」という。

 写真家となり、仕事にも慣れた約1年前から、原爆を正当化する風潮に一石を投じられる写真を撮影しようと思い立った。被爆者団体などに連絡を取り、ことし4月下旬、長崎市で8人を撮影した。

 広島市には今月3日に入った。原爆資料館(中区)である勉強会などにも出席し、被爆の実態に迫ろうとしている。「原爆の被害は『過去の済んだこと』ではない。米国人にも被爆者たちの苦悩や複雑な思い、感情の違いを理解してほしい」と望む。

 すでに協力を申し出た被爆2世もいる。長崎市で母親が被爆したビオラ奏者の沖西慶子さん(52)=安佐北区。「若い人が世界に被爆者たちの実態を発信してくれるのはとてもうれしく、心強い」と期待する。

 撮影に協力したい人は、平和のメッセージを手書きで便箋1枚にまとめて、阪口さんへ国際電話か電子メールで申し込む。☎010(1)661(755)5522、メールアドレスはhsakag@gmail.com

(2017年6月16日朝刊掲載)

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