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移転「容認」流れじわり 岩国基地艦載機問題 周辺の市町議会 首長判断 見越す動きか

 在日米軍再編で米海兵隊岩国基地(岩国市)へ7月以降、空母艦載機61機が移転する計画を巡り、基地周辺市町の議会で、「容認」の意思表明への動きが出ている。過去に相次いだ反対決議を軌道修正する狙いで、地元首長の受け入れ判断を前にした「下地づくり」との見方もある。一方で、国の米軍再編交付金の支給対象外の廿日市市は議会があらためて反対の意見書案を可決。移転の是非には議会間で温度差がある。

 16日の岩国市議会定例会の本会議。移転容認派が大勢を占める中、再編交付金を活用した事業の今後の見通しなどの質問が出た。賛否の意見を踏まえ、福田良彦市長は最終日の23日にも是非を判断する方針だ。

 移転計画が浮上した2005年6月、同市議会は全会一致で反対を決議。基地周辺の山口県和木、周防大島両町、柳井市、広島県側の大竹市や廿日市市などの各議会で決議し、県境をまたいで反対が広がった。その後、岩国市議会は07年3月に「現実的対応」を求める決議を可決し、事実上の容認姿勢に転じた。

交付金の対象

 周防大島、和木両町も、当時の町長が06年に容認姿勢を表明。翌07年に再編交付金の支給対象となった。以降、反対決議に代わる議会の意思は示していない。再編に理解を示す現在の両町長は、福田市長の判断を受けてあらためて表明する方針だが、「反対決議のままだと議会と意見が食い違う」(町議会関係者)。このため、両町議会では月内に容認の意見書案を提出する動きが進んでいる。

 大竹市は06年に入山欣郎市長が容認へ方針転換し、翌年、再編交付金の支給対象に。今月12日の市議会定例会でも入山市長は「既に容認している」と強調。同市議会では19日の特別委員会で、受け入れを前提に安心安全対策を求める要望書が提案される見通しだ。

廿日市は反対

 一方、再編交付金の対象外の廿日市市と柳井市。廿日市市議会は3月、艦載機移転を「断じて容認できない」とする意見書案を可決し、反対の立場を鮮明にした。柳井市議会では新たな動きはなく、今月12日の市議会一般質問で井原健太郎市長は岩国市の動向を「注視する」と静観の構えだ。

 山口県議会も05年、艦載機移転に反対の意見書案を全会一致で可決した経緯がある。現在、最大会派の自民党の間では容認に向け、「負担と貢献に見合う地域振興策などを求める意見書を決議する必要がある」との声が強まる。

 同県の村岡嗣政知事は受け入れ判断について、「地元の意向を尊重する」としている。

米空母艦載機移転計画
 在日米軍再編で米海軍厚木基地(神奈川県)から艦載機61機が米海兵隊岩国基地へ移転する計画。早ければ7月にも配備が始まる予定。移転に伴い岩国基地の配備機数は倍増の約120機、軍人・軍属や家族は1万人を超える見込み。国は2007年成立の米軍再編推進法に基づき、再編への協力の度合いなどに応じて関係自治体に再編交付金を支給。岩国基地関連では、岩国市と大竹市、山口県周防大島町、同県和木町の2市2町が対象となっている。

(2017年6月19日朝刊掲載)

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