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山口県や市町 国回答評価 艦載機移転 県への交付金拡充「前向き」 市民団体「露骨な懐柔策」

 米海兵隊岩国基地(岩国市)への空母艦載機移転計画に絡み、山口県などが要望した県交付金拡充について20日、国はあらためて増額や延長の方針を県に伝えた。岩国市の福田良彦市長が23日にも受け入れ是非を判断する直前の「前向き回答」。県や市町は一様に評価したが、移転反対の市民団体は「露骨な懐柔策」と批判を強めた。

 岸信夫外務副大臣と宮沢博行防衛政務官がこの日午前、県庁を訪れて村岡嗣政知事たちと面会。10分足らずの会談で、準備された書面を報道陣の前で互いに読み上げた。

 県側が求める県交付金の増額や延長などについて、宮沢防衛政務官は「艦載機の騒音による地元負担が継続することを考慮し、地元の思いも踏まえ、具体的な要望をうかがい前向きに検討したい」と説明。村岡知事も「拡充措置の実現に向けて前向きな回答をいただけた」と応じた。

 約3時間半後、国側の回答を携えた弘中勝久副知事が岩国市役所で福田市長に「知事は前向きな回答と受け止めている」と伝えた。その後の非公開の会談後、福田市長は報道陣に「回答を聞き、今後の期待を膨らませている」と述べた。

 県側は同日、同じく市町の米軍再編交付金の支給対象の周防大島町と和木町にも伝達。椎木巧・周防大島町長は「大きな支援をもらえると期待感を持った」。米本正明・和木町長も「実現を期待したい」と評価した。両町長は23日にも表明する福田市長の判断を踏まえ、27日に是非を判断する見通しだ。

 ただ、今回も国から延長期間や増額の具体的な説明はなかった。先月25日、村岡知事や福田市長が首相官邸や防衛省を訪ねて県交付金拡充を求めた際も、面会した若宮健嗣防衛副大臣は「真摯(しんし)に前向きに検討したい」と回答。「前向き」の中身は、いまだ見えていない。

 艦載機移転に反対する市民団体からは批判の声が上がる。岩国市の政治団体代表の井原勝介前市長は「(交付金という)アメを宣伝して、基地拡大への市民の不満を抑え込もうとしている」とみる。「岩国基地の拡張・強化に反対する広島県西部住民の会」の坂本千尋事務局長は「容認に向けた準備だ」と指摘し、「艦載機移転は山口県だけでなく、交付金を受けていない近隣自治体にも影響する問題だ」と訴えている。

周防大島町長に反対表明求める 住民団体要望書

 岩国市の米海兵隊岩国基地への空母艦載機移転計画を巡り、周防大島町の住民団体「大島の静かな空を守る会」は20日、反対の意思表明をするよう椎木巧町長に求める要望書を提出した。

 要望書は、うるささ指数(W値)70以上の区域が同町三蒲や屋代、小松、椋野、伊保田付近まで拡大する国の騒音予測を受け、大きな負担増になると指摘。生活環境を悪化させてまで再編交付金を求めるべきではないとし、町長にはっきりと移転拒否の態度を示すよう求めている。

 河井弘志代表委員(81)たち12人が、町役場で岡村春雄副町長に要望書を提出した。「要望はしっかりと町長に伝えたい」と岡村副町長。河井代表委員は「容認すると、その後物が言えなくなる。間違いのない判断をしてほしい」と話した。

住民不安払拭へ「粘り強く要望」 和木町長、議会で

 和木町議会は20日の一般質問で、米海兵隊岩国基地への空母艦載機移転計画を巡る質疑を交わした。

 艦載機移転による騒音悪化や事件事故の増加を懸念する質問に、米本正明町長は「住民の不安は完全には払拭(ふっしょく)されていない。粘り強く国に要望する」と答えた。移転に関する住民説明会開催の考えを問われると、「今後も開く予定はない」と否定した。

 町が求める日米地位協定の改定が実現していない点について、町側は「十分な見直しがなされておらず、引き続き努力が必要だ」とした。

(2017年6月21日朝刊掲載)

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