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岡さんの遺志 次世代へ 親交の波多野さんら伝承 原爆による広島壊滅 第一報

 原爆による広島壊滅の第一報を伝え、先月に86歳で病死した岡ヨシエさんの記憶と平和への思いを、親交があった広島市安芸区の波多野愛子さん(64)たちが語り始めた。「伝承者」として託され、生前に「証言」の原稿をまとめていた。「若い人に未来永劫(えいごう)伝えて」という遺志を継ぐ。(野田華奈子)

 岡さんは比治山高等女学校(現比治山女子中・高)3年の時、広島城本丸跡(現中区)にあった中国軍管区司令部防空作戦室に動員されていて被爆。直後に廃虚となった市街地を見て、電話で福山の部隊に知らせた。

 波多野さんは20日、中区の原爆資料館東館で岡さんの死後初めて修学旅行生に講話。今も残る旧作戦室の写真などをスクリーンに映し、当時の様子を語った。「広島が全滅しています」と電話で伝えた緊迫した場面は、安佐北区の梅津千秋さん(58)が手記を基に朗読した。

 波多野さんたちと岡さんの出会いは12年前。所属するNPO法人ヒロシマ宗教協力平和センターの平和学習で、被爆体験を語ってもらった。以後、55回を数えた。昨年9月、岡さんから伝承を打診され、「信頼していただいたのだから」と引き受けた。

 岡さんはことし3月に入院。手帳には講話の予約がびっしり書き込まれていた。波多野さんたちは手記などから証言の原稿を作成し確認してもらった。「お願いしますね」。見舞うたびに、笑顔でそう繰り返した岡さんは先月19日、悪性リンパ腫で亡くなった。

 「岡さんが見た戦争の悲惨さを二度と体験させてはならない。精いっぱい続けたい」と波多野さん。この日の講話は自らに言い聞かせるようにこう結んだ。「岡さんの切なる願いが私の心に響いてきました。次の世代へと伝えます」

(2017年6月21日朝刊掲載)

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