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反対派「艦載機容認撤回を」 岩国 経済界は活性化期待

 騒音悪化や事件事故を懸念する市民団体は一斉に抗議の声を上げ、地元経済界は市の活性化へ期待を膨らませた。岩国市の米海兵隊岩国基地へ7月以降、空母艦載機61機が移転する計画について、福田良彦市長が受け入れを表明した23日、市民の間に賛否が渦巻いた。

 容認表明の舞台となった市議会議場。傍聴席は市民たち約70人で埋まり、立ち見も。農業勝又みずえさん(73)=本郷町=は移転の影響を懸念し、「若者が定住しなくなる。一時的な経済効果があっても人口が減れば岩国に未来はない」。村中良雄さん(75)=元町=は「国に協力するのは大事」と理解を示しつつ、「騒音対策を強化して住みよいまちにして」と注文した。

 市長の表明後、反対派5団体でつくる「異議あり!『基地との共存』市民行動実行委員会」は市役所前で緊急集会を開いた。約60人を前に、岡村寛実行委員長(73)は「岩国の基地機能はますます強化される」と主張。米軍関係者による事件事故の増加の可能性を指摘し、市の対応を批判した。

 米軍機の騒音被害に苦しんできた全盲の鍼灸(しんきゅう)師森本健一さん(55)=由宇町=は市役所で担当者に「爆音による健康被害の責任を市は取れるのか。表明の撤回を」と迫った。JR岩国駅前で抗議活動をした、市民団体「瀬戸内海の静かな環境を守る住民ネットワーク」の伊達純事務局次長(55)は「移転容認に抗議し続ける」。

 2005年に移転容認を決議した岩国商工会議所の長野寿会頭(80)は記者会見し、「市長の判断を全面的に支持する」。米軍関係者の増加を「商機」と捉え、住宅や日用品などの需要取り込みに意欲を見せた。市内で長男(3)と買い物をしていた主婦三秋希望さん(30)=平田=は「北朝鮮問題もあり、米軍と助け合うのは重要。ただ夜は飛ばないよう、市は国や米軍に要望してほしい」と訴えた。

「市の判断を尊重」/「低空飛行中止を」 周辺市町 割れる賛否

 米空母艦載機の移転容認を岩国市の福田良彦市長が表明した23日、国の米軍再編交付金の対象となっている山口県和木、周防大島の両町長や大竹市長は理解を示した。一方で、交付金対象外の廿日市市長は改めて反対を訴えた。

 和木町の米本正明町長は「岩国市長の決断に敬意を表したい」。周防大島町の椎木巧町長は「岩国市の判断を尊重する」とし、ともに27日に容認を表明する見通しだ。既に移転を容認している大竹市の入山欣郎市長も「岩国市長の決断を改めて重く考える」。山口県の村岡嗣政知事は「残る2町の意見を踏まえて適切に判断する」と語った。

 移転に反対する廿日市市の真野勝弘市長は「騒音問題など市民生活への影響が懸念される。今後、低空飛行訓練の中止、市街地や宮島の上空を飛行ルートから外すことを国などに求めていきたい」とした。

 広島県の湯崎英彦知事は基地がある岩国市に加え、県や県内の関係自治体の理解を得て進めるよう国に要請していた。「事件・事故はもとより、不安が増すことがないよう国などに粘り強く働き掛ける」とのコメントを出した。

(2017年6月24日朝刊掲載)

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