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IPPNW世界大会 広島で24日開幕 反核結集 若者も準備

25ヵ国120人が次の活動立案 22・23日に医学生会議

 広島市中区の広島国際会議場で24~26日に開かれる核戦争防止国際医師会議(IPPNW)世界大会に合わせて、若者が集い、核廃絶に向けて議論を深める。医学生と若手医師による医学生会議は世界大会に先立つ22、23の両日、高校生や大学生のユースサミットは25日午後2時40分から、いずれも同会議場で開かれる。(二井理江)

 医学生会議は、米国やドイツ、スイス、インド、ニカラグアなど約25カ国の医学生や若手医師ら事前に登録した約120人が参加する予定。活動報告やワークショップを通して、若者による学術的な視点で、核と健康について話し合い、今後の活動計画をまとめる。

 基調講演は、広島の被爆者で元産婦人科医師の中本雅子さんと、広島平和文化センター理事長のスティーブン・リーパーさんが務める。活動報告では、核兵器の被害継承プロジェクトや、長崎市を9日に出発し、核の健康被害や核廃絶を訴えながら自転車で広島市に向かっている「バイクツアー」などについて、学生や若手医師が発表。ワークショップでは計14のメニューで議論する。今後の活動計画は、23日に発表する。

 実行委員長で長崎大学病院精神神経科医師の茅野龍馬さん(27)は「広島に集まったのをきっかけに、核のことを考え、次の活動にどうつなげるか共有したい。それをさらに、それぞれの国で続けていきたい」と話している。

「核兵器はなぜ存続」探る 25日にユースサミット

 ユースサミットは、「核兵器はなぜなくならないのか―広島で考えよう」がテーマ。原爆投下から67年すぎた今も核兵器が存在し続ける理由とともに、将来に向けて若者がすべきことを議論する。

 米国、インド、ブラジル、カザフスタン、日本の高校、大学生計7人が登壇。核兵器廃絶が実現できない理由や、自身にできることについて、各自がスピーチする。その後、参加者6、7人程度ずつのグループに分かれ、それぞれ日本語や英語で意見を交換した上で、全体でまとめる。

 ユースサミットに先駆けて、6、7月の2回、広島を拠点に活動している米国出身の詩人アーサー・ビナードさん(45)を講師に迎え、核兵器や原発に関する事前学習会を開催。23日午後3時からは、中区の原爆資料館で、ビナードさんやパネリストを交えてプレミーティングを開く。

 実行委員長の広島城北高(東区)3年渡辺空太さん(17)は「海外の人と意見や見方を共有することで、それぞれの平和論をいい形で変えるとともに、世界平和と核兵器廃絶に向けて活動する仲間を世界中に広げたい」と目標を掲げている。

 参加無料。日英の同時通訳付き。事務局Tel082(232)7211。

原発推進は利権 ビナードさん講演要旨

 ユースサミットの事前学習会は6、7月に広島市西区の広島医師会館であり、講師のアーサー・ビナードさんは核の平和利用と原爆とのかかわりなどについて話した。講演要旨は次の通り。

 僕は米国ミシガン州出身。中学と高校では、原爆を落とさなければ戦争は終わらず、100万人の米兵が殺されただろう、と習った。みんなの生活と命を守るため2発の原爆を落とした、って。そんなものかな、と聞いていた。ただ、「何で2発落としたんだろう」と、うさんくさく思っていた。

 マンハッタン計画という核開発プロジェクトは、税金をつぎ込んで極秘に行われていた。これは憲法違反。だから、政府は計画を正当化する必要があった。それが、原爆投下のおかげで戦争が終わったというキャンペーンにつながった。さらにソ連を敵国として恐怖をあおった。

 トップの人たちは、本気で核戦争しようとしていない。米ソで核戦争すると「核の冬」が来てしまう。ビジネスとして核の利権構造を維持するため、「核の平和利用」として原発を進めるキャンペーンをした。日本もそれに乗っかった。原子炉は、核兵器になるプルトニウムづくりの装置なんですけどね。しかも今、出来上がったプルトニウムの最終処分ができずにいる。

 核兵器が抑止力になるというが、国防を本気で考えるなら、原発を置いてはいけない。通常兵器や小型飛行機で原発に突っ込むだけでいいのだから。

 利権構造に組み込まれていない高校生だからこそ、行動して伝わることもある。50年後のことを本気で考えられるのは高校生。ヒロシマ、ナガサキを通して、フクシマやスリーマイルなど「今」を見てほしい。

(2012年8月20日朝刊掲載)

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