×

ニュース

被爆死の米兵捕虜研究 森さん半生 後輩が映像化 国泰寺高放送部 全国へ思い伝える

 国泰寺高(広島市中区)の放送部員14人が、同校の卒業生で、被爆死した米兵捕虜を研究してきた被爆者の森重昭さん(80)=西区=の半生をたどる映像作品を制作している。昨年5月に広島を訪れた前米大統領のオバマ氏と対面した際の心情などをインタビュー。7月下旬に東京であるNHK杯全国高校放送コンテストへの出品が決まっており、27日は最後の取材に臨んだ。(新谷枝里子)

 タイトルは「42年間のキセキ」。森さんが38歳ごろから会社勤めの傍ら続けてきた実態調査の「軌跡」を、8分間にまとめる。日米で資料を探し求め、米兵捕虜12人が犠牲になったと突き止めた「奇跡」を、森さんの語りを中心に構成する。

 これまでの取材を基に制作した作品を、今月10、11の両日に呉市であった広島県大会に出品。テレビドキュメント部門で優秀賞に選ばれ、全国大会への推薦が決まった。より良い作品に仕上げるため、27日に同校であった森さんの講演会を収録し、終了後には感想なども聞き取った。

 森さんは昨年5月、平和記念公園を訪れたオバマ氏に肩を抱かれ、世界から注目を集めた。しかし放送部員の周囲では、森さんの実績を知る人が少なかったという。そこでことし3月、卒業生でもある森さんについて掘り下げようと題材に決定。森さんも「若い後輩に思いを聞いてもらい、これほどうれしいことはない」と快諾した。

 作品で森さんは、オバマ氏との対面を「長年の研究が認められた」と感無量の面持ちで振り返る。調査を続けてきた動機についても語り「家族を思う気持ちに敵も味方もない。どのように亡くなったか遺族に伝えたかった」と紹介する。

 部員の3年平野沙紀さん(17)は「平和への第一歩は、戦争や原爆で何が起こったかを知ることだと思う。作品で森さんの思いを引き出し、高校生にも分かりやすく伝えたい」と意気込む。

(2017年6月28日朝刊掲載)

年別アーカイブ