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騒音・墜落 県境越え懸念 岩国艦載機 容認判断 尊重も

 「艦載機移転は山口だけの問題ではない」―。山口県の村岡嗣政知事が米海兵隊岩国基地(岩国市)への空母艦載機移転を容認した30日、県境を越えた広島県の市民団体から反発や懸念の声が相次いだ。一方、米軍再編交付金を受けている大竹市や地元岩国市では、知事の判断を評価する声も聞かれた。

 「広島でも騒音で苦しんでいる人がいる。容認は断じて許せない」。「岩国基地の拡張・強化に反対する広島県西部住民の会」の坂本千尋共同代表(64)=廿日市市=はこの日、山口県議会本会議を傍聴し、受け入れを表明する村岡知事を厳しい表情で見詰めた。

 広島県の調査では、同基地の米軍機とみられる低空飛行の目撃件数は7年連続で千件を超え、特に県北部が目立つ。4月に発足した「西部住民の会」の県北地域世話人会の小武正教さん(59)=三次市=は「山口の有志とも協力し、徹底的に抗議する」。同県北広島町では毎年度、低空飛行の目撃が最も多く、同町八幡地区の小笠原幸信・区長会長(62)は「騒音が増え、墜落の危険性も増すのでは」と懸念を強めた。

 海上自衛隊呉基地や米軍関連施設がある呉市。市民団体「ピースリンク広島・呉・岩国」の西岡由紀夫・呉世話人(61)は「呉の関連施設も増強される懸念がある。日米共同作戦などで岩国基地と呉基地の連携はさらに進む」とし、両基地の監視を強める考えだ。

 岩国基地の北東に浮かぶ大竹市阿多田島では、騒音拡大が予想される。阿多田島漁協の川原秀正組合長は「今後の騒音被害に十分な対応を」と国などに注文。大竹商工会議所の望戸清彦会頭も「地元の判断を尊重したい」とし、交付金による安心安全対策を求めた。

 地元の岩国市。移転に反対する政治団体代表の井原勝介前市長は「とっくに受け入れを決めていたのに、ごまかしてきた」と山口県や市の対応を批判。市中心部の市中通商店街振興組合の藤田信雄理事長(54)は「移転で米国人が増えるのはビジネスチャンスだ」と消費拡大に期待を寄せた。

(2017年7月1日朝刊掲載)

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