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【解説】 岩国艦載機容認 山口知事 増す責任 隣県や沖縄も対応注視

 3代の知事にわたる10年余りの曲折を経て、山口県の村岡知事が30日、米海兵隊岩国基地への空母艦載機の移転受け入れを表明した。容認判断は「極東最大級の米軍基地」を抱える知事となることを意味し、重責も増す。

 村岡知事は判断理由に「全ての市町で容認」を挙げた。広域行政のトップとして、基地のある岩国市と周辺の同県周防大島、和木両町の意向を尊重した形だ。ただ、3市町は米軍再編への協力度合いに応じ、国が支給する再編交付金の対象自治体でもある。容認は当然の帰結であり、それを踏まえた知事の決断に苦悩の跡は見えなかった。

 一方で、再編交付金の対象外の廿日市市では移転反対が根強い。米軍機の訓練空域に県市町の境界は関係なく、中国山地でも低空飛行が度々目撃されている。3市町以外の山口県内の自治体でも騒音や墜落の危険はあり、隣県の広島、島根にも懸念の声はある。

 さらに、村岡知事は前提条件とする「米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設見通し」についても、国の回答を理由に「クリアされた」とした。沖縄県知事が反対姿勢を強める中、あまりにも国と歩調を合わせた判断ではないか。

 移転完了後、基地の町イワクニは米軍機約120機が所属する巨大な軍事拠点となる。国へ基地問題の対策を求める渉外知事会での山口県の役割は強まるはずだ。隣県や沖縄県とも連携し、村岡知事には、これまで以上に「地元」の声を丁寧にくみ取る姿勢が求められる。(和多正憲)

(2017年7月1日朝刊掲載)

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