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社説・コラム

天風録 「『8・6』登校日」

 「マチクイの諷(うた)」という芝居は、被爆体験を下敷きにしている。2006年以来、各地で上演されてきたが、節目だった被爆70年のおととしはなぜか、なかった▲「周年とか節目の年にはしない」。作者である長崎市の劇作家福田修志さんは以前、そう話していた。被爆の記憶に向き合うべきなのは、「節目」に限らないということなのだろう。もっともだと共感しながら、やはり節目も大切にしたいと思った▲今の子どもたちの多くはおじいちゃん、おばあちゃんも戦後生まれだからである。72年前の悲劇をリアルに捉えるには、せめてこの日はと考える時間も必要な気がする。とりわけ今年は「8月6日」が持つ意味を見直すことになりそうだ▲広島市立小中学校の多くが毎年平和学習に充ててきた8月6日の登校日が法令の関係で実施できなくなった。そもそも原爆投下された日時を正しく答えられる子どもが減ったのを踏まえ、続けられてきた登校日である▲学校に行かなくても、一瞬にして多くの命が奪われた日であることに変わりはない。6日はちょうど日曜日。平和記念式典や各地の慰霊行事に親子や友人同士で出掛け、思いをはせる日にすることもできる。

(2017年7月1日朝刊掲載)

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