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社説・コラム

社説 米韓首脳会談 隔たり埋められるのか

 米国のトランプ大統領と韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が、ホワイトハウスで初めて会談した。

 最重要課題は言うまでもなく、米国が「差し迫った脅威」とする北朝鮮問題だ。両氏は同盟関係を確認し、防衛力を強めて挑発行為には断固とした対応を取ると表明した。ひとまず目的は達成したといえよう。

 両国の「強固な同盟」が誇示され、良好な関係が演出された陰で、隔たりが見え隠れしたのも否めない。防衛のための最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備などの懸案についてである。

 文氏にとっては5月の就任後初めての外遊だった。歴代の韓国大統領も、まず米国を訪問して同盟関係の強化を確認してきたという。北朝鮮とにらみ合う韓国にとっては、米国との関係は安全保障の要だからだ。

 文氏は選挙期間中から北朝鮮に対して融和政策を打ち出してきた。米国との同盟関係を強調することで、「親北朝鮮」とのイメージを拭い去り、まずはトランプ氏との個人的な関係づくりを優先させたのだろう。

 会談でトランプ氏は「米韓同盟は平和の礎」と述べ、「私たちには多くの選択肢がある。強力でしっかりした計画がある」とも主張した。文氏も「強固な同盟関係の構築に向け、米韓が共に歩むことを再確認する機会となった」と語った。核・ミサイル開発を進める北朝鮮をけん制する狙いがうかがえる。

 会談後の共同声明では、南北対話再開を目指す文氏の意欲をトランプ氏が「支持する」ことも示した。これも良好な関係のアピールだろう。

 両国には、表面的な演出に終わらせず、朝鮮半島の非核化に向けた交渉に、北朝鮮が戻るよう力を尽くしてほしい。

 ただ、防衛に関する火種は残ったままである。文氏が慎重姿勢を示しているTHAADの配備問題だ。

 首脳会談前日、文氏は米下院指導部と会い、配備についての米韓合意を覆す考えはないと述べている。早期配備を求める米国の疑念を晴らそうと努めたようだが、記者会見でこの件に言及しなかったのが気になる。

 韓国南部では既に発射台2基が初期的な運用を始め、ほかに4基が韓国内に搬入されているという。米国は年内の配備完了を目指しているが、文氏は1、2年かかる環境影響調査を行う方針だ。隣国の中国がTHAADのレーダーで自国内を監視されるとして撤去を求めていることへの配慮もあるのだろうか。

 もう一つ、通商問題でも溝は鮮明になった。トランプ氏は自由貿易協定(FTA)見直しを念頭に「再交渉を行う」と主張した。韓国政府高官は、記者団に「再交渉で米側と合意していない」と強調している。こうしたギャップを両国がどう埋めていくのか。課題が残った。

 共同声明は、日本を含む3カ国が連携する重要性も訴えた。ドイツで7、8日に開かれる20カ国・地域(G20)首脳会合に合わせ、安倍晋三首相を交えた会談を開く方針も示された。米韓の政権交代後初めての3カ国会談となる。責任ある議論が深まることを期待したい。

 もちろん3カ国にも隔たりはある。だが立場の違いを超え、朝鮮半島の平和と安定に向け関係を盤石にする必要がある。

(2017年7月2日朝刊掲載)

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