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訪日シスター 広島へ案内 ノートルダム教育修道女会の鎌田さん 原爆被害 世界に発信

 世界に10億人以上いるカトリック教徒に原爆の被害や現在の核状況を知ってもらう一助にと、ノートルダム教育修道女会(京都市左京区)の鎌田論珠(ろんじゅ)さん(78)が交流事業などで来日するシスターらを広島へ案内している。ことしは米国人2人を引率し、広島県が要請するローマ法王フランシスコの被爆地訪問の意味を確認した。(金崎由美)

 広島を訪れたのは米メリーランド州のキャサリン・フィーレーさん(88)と、ミズーリ州のローズ・ヒューズマンさん(73)。同修道女会が設立母体のノートルダム女学院での特別講義の後、広島入りした。原爆が投下された午前8時15分に合わせて平和記念公園(中区)を歩き、「犠牲者の無念が胸に迫る。平和は何よりも尊い」とフィーレーさん。「嵐の中の母子像」などのモニュメントも巡った。

 鎌田さんはシスターたちに平和への祈りと学びの機会を提供するため、35年前から2~5人の小さな研修旅行を実施する。多忙だった約10年間を除いて自ら同行し、ともに被爆者の証言を聞いたり、原爆資料館を見学したりしている。これまでに米国、アフリカや中南米からの約250人を被爆地にいざなった。

 カトリックと核兵器廃絶運動は、深い関係にある。現法王は2年前の国連総会で演説し、核抑止力への批判と「核兵器の完全禁止」を強調。核兵器禁止条約の実現を求める機運が勢いづいた。今年3月の第1回の条約交渉にも「平和は相互破壊の恐怖ではなく、正義や人権尊重の上に築かれるべきだ」とするメッセージを寄せている。

 シスターたちは国連本部での条約交渉に被爆者らが大いに注目していることを初めて知ったという。ヒューズマンさんは「法王の広島訪問が実現すれば素晴らしい。被爆地の願いを周囲に広めたい。『核兵器はいらない』という訴えも強める」と話していた。

 「被爆体験とともに、なおも核兵器が存在する世界の現実へと視野を広げてもらいたい」と鎌田さん。広島で見たものを各国の教育活動や平和活動に生かしてもらえればと願う。

(2017年7月3日朝刊掲載)

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