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[核なき世界への鍵] 「被爆者」 最終案も言及 禁止条約交渉 7日採択へ議論

 米ニューヨークの国連本部で開かれている「核兵器禁止条約」制定に向けた交渉会議で、ホワイト議長(コスタリカ)は3日、条約の最終案を示した。草案段階から前文にあった「被爆者」の苦しみと努力の記述が残ったほか、禁止事項では使用をちらつかせる「威嚇」を明示した。会期末の7日の採択へ向けて議論を詰める。(ニューヨーク発 水川恭輔)

 前文では「核兵器使用の被害者(被爆者)の耐えがたい苦しみと被害に留意する」と記載している。さらに、草案になかった核兵器の事故や誤射のリスクが記され、核兵器に依存する安全保障の危険性を強調。締約国の「原子力の平和利用」については、条約が影響を与えないとした。

 禁止事項では、使用や保有、開発など草案から記していた行為に、核抑止政策に関わる威嚇を加えた。実験に関しては、当初あった「爆発を伴う」の条件を削除。臨界前核実験も対象だと明確化するよう求める一部の国に応えた形だ。

 非政府組織(NGO)から明記を望む声が強かった領海・領空などの「通過」と、核開発に関わる「融資」は見送り。ともに「支援」の禁止で網を掛けられると一部の国が主張していた。

 修正案で入った、保有国が核兵器をなくす前でも加盟できるようにする規定は大筋維持。保有国が締約した場合、核兵器を使用を念頭にした配備からすぐに外し、後戻りしない廃棄計画を60日以内に出す。締約国会議で決める期限までにできるだけ早く廃棄を進め、国際機関が検証する。

 核使用や核実験の被害者への援助は、国連の枠組みやNGOを通じた国際的な推進を掲げる。発効要件は一部の国が増やすよう求め、草案から10カ国増の50カ国の批准とした。国連総会に各国首脳らが出席するハイレベル会合に合わせ、9月19日から全ての国が署名できるように定めた。

 また、国連はこの日までに正式な交渉参加国リスト(6月23日付)を公開し、非保有121カ国・地域となった。核兵器を持つ全9カ国や、米国の「核の傘」に依存する日本などは載っていない。

(2017年7月5日朝刊掲載)

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