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35年4月撮影 被爆電車3両 デジタル化で判明 被爆前広島写した16ミリフィルム

 原爆資料館(広島市中区)は、被爆前の市中心部の映像で、唯一原本を所蔵している16ミリフィルムを高解像度でデジタル化し、5日、ホームページ(HP)で公開した。より鮮明になった映像から、撮影時期を1935年4月に絞り込めたほか、路面電車3両が後に被爆した車両だったと判明した。

 63年に撮影者の河崎源次郎氏(故人)が市に寄贈したフィルム(約3分)。八丁堀付近を人や電車が行き交う様子のほか、相生橋、原爆ドームの前身の県産業奨励館、旧中島地区などを捉えている。

 高画質処理によって多くの文字が判読できるようになり、八丁堀にあった映画館「東洋座」と「太陽館」の看板の作品名や上映時期などから、撮影時期は35年4月3日の可能性が高いという。当時は、ひな祭り行事がこの日にあり、晴れ着姿の人が多く写る点とも合致する。

 3両の路面電車の車体に記された番号を他の資料で調べると、いずれの電車も10年後の8月6日に被爆していた。1両は全焼し、2両は復旧した後、63年と69年にそれぞれ廃車になっていたことが分かった。

 資料の劣化対策と保存措置を進める資料館が3月、業者に発注。汚れや傷を除去するなど約1カ月かけて処理した。学芸課は「画質が向上し、より詳細な考証が可能になった。当時の市民の暮らしや街の活気をより身近に感じ、撮影から10年後に原爆で失われるものの大きさを想像してほしい」としている。(野田華奈子)

(2017年7月6日朝刊掲載)

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