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社説・コラム

社説 北朝鮮ICBM発射 連携強めて挑発許すな

 北朝鮮が、射程が一般に5500キロ以上とされる大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射に成功した。当初、射程の短い中距離弾道ミサイルとみていた米国がきのう、ICBMだったと初めて公式に認めた。

 自制を再三求めてきた国際社会の声を無視して、強行された暴挙である。これ以上許すわけにはいかない。

 米国は、ICBM発射を、それに載せる核弾頭の小型化とともに「レッドライン(越えてはならない一線)」としてきた。ロシアゲート疑惑など内政面で追い詰められたトランプ大統領が、武力行使など思慮に乏しい行動に踏み切る口実にしないだろうか。憂慮すべき事態だ。

 北朝鮮の狙いは、自らの攻撃能力を米国に誇示し、敵視政策をやめさせることだろう。そのため、「火星14」というICBMを新たに開発して発射した。日本の排他的経済水域(EEZ)内の秋田県・男鹿半島から約300キロ離れた日本海に落下した。わざと高く打ち上げ、高度2800キロを超え、39分間飛んだという。

 専門家の分析によると、通常の軌道で飛ばせば米本土のアラスカ州に達する能力がある。西海岸まで届く約1万キロ飛ぶとの見方もある。しかも、弾頭を大気圏に再突入させる方法を含めて、実用化に向けた技術は着々と進歩させているようだ。

 核弾頭に関しても、恐るべき進展だ。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、核弾頭は1月時点で10~20個。最大10個とした1年前の推定から増やしているのは確かだろう。

 レッドラインを越えつつあるのは間違いなさそうだ。とはいえ、米国が軍事行動を取れば、全面対決につながり韓国や日本に大きな被害が出かねない。

 道がどれほど険しくても対話解決を諦めるべきではない。核兵器による被害の大きさを知る日本が先頭に立ち、米国や韓国など鍵を握る国々に、その努力を求め続ける必要がある。

 ただ、外交的解決を目指す取り組みも成果は十分でないのが現実だ。経済制裁に抜け穴があるからだろう。特に気になるのは、中国とロシアである。

 中国は北朝鮮を経済的に支えてきた。米国に促され締め付けに努めたが、不十分だ。米国は先日、中国の銀行を北朝鮮のためのマネーロンダリング(資金洗浄)に関わったとして、米金融機関との取引を禁じる方針を発表した。中国自身が積極的に、資金源を絶つため汗をかくことが求められよう。

 ロシアの責任も重い。最近まで軽油などを年20万~30万トン供給していた実態が明らかになった。許されない行為だ。

 中国とロシアは、ICBM発射を重く受け止め、北朝鮮支援を改めることが必要だ。両国は首脳会談でミサイル発射に「深刻な懸念」を表明し、受け入れられないと非難したばかりだ。言葉だけで終わらせず、より厳しい行動を取るのが筋だろう。

 両国の協力がなければ、北朝鮮の挑発に歯止めをかけるのは難しい。日本は、近くドイツである20カ国・地域(G20)首脳会合に合わせて米国、韓国との首脳会談を開く。3カ国の連携をまず固め、効果的な国際包囲網をどう具体化するか。対策はもはや待ったなしだ。

(2017年7月6日朝刊掲載)

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