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[核なき世界への鍵] 核兵器禁止 世界の潮流 条約採択し会議閉幕

日本政府 「署名しない」

 米ニューヨークの国連本部で開かれていた核兵器禁止条約の制定交渉会議は7日、閉幕した。使用や使用の威嚇など核兵器に関する行為を全面的に禁止する初の条約を採択し、ホワイト議長(コスタリカ)は「核兵器のない世界への大きな一歩」と強調した。ただ、米国の「核の傘」の下で条約交渉に反対してきた日本の別所浩郎国連大使は同日、「署名しない」という日本の立場を言明した。(ニューヨーク発 水川恭輔)

 採択後の各国の演説では、72年前の広島、長崎の惨禍や、被爆者への感謝に触れる発言が目立った。非政府組織(NGO)枠では広島市南区出身の被爆者、サーロー節子さん(85)=カナダ・トロント=が「核兵器は人類の命を危険にさらす。地球を愛するならば条約に署名を」と呼び掛け、満場の拍手を浴びた。

 ホワイト議長も記者会見で「国際社会が核保有国に対する態度を強め、加盟するよう働き掛けてくれると思う」と期待感を示した。一方、別所大使は議場外で記者団に条約に署名しない政府方針を明かし、「(条約交渉は)保有国と非保有国が協力して核兵器のない世界を目指す姿で行われたものではない」と述べた。

 条約は全20条。前文で、広島、長崎の被爆者の「耐えがたい苦しみと被害」や核兵器廃絶を訴えてきた努力に言及。核軍縮の停滞への懸念を記す。1条で禁止事項を定め、使用や、使用するという威嚇、保有、実験、開発などを列挙。保有国が核兵器をなくす前でも、定められた期限までに国際機関の検証を受けて廃棄するならば加盟を受け入れる。9月20日に各国による署名を始め、50カ国が批准して90日後に発効する。交渉を主導してきた推進国の当局者は、9月の署名開始から「12~18カ月の間に発効するとみている」と述べた。

 昨年の国連総会で交渉開始を決議し、ことし3月27~31日と6月15日~7月7日に会議を開催。国連加盟193カ国のうち120カ国以上が交渉に参加した。最終日の条約案の賛否を問う投票で、賛成は122。オランダだけが反対し、シンガポールが棄権した。米ロや北朝鮮など核保有全9カ国は交渉に不参加だった。

(2017年7月9日朝刊掲載)

【解説】核兵器禁止条約採択 「扉」開く鍵に育て

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