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【解説】核兵器禁止条約採択 「扉」開く鍵に育て

 国際社会で核兵器は違法な非人道兵器であるとの規範を作り、核に依存する国に圧力をかけて廃絶を目指す。そんな狙いで、世界の多数を占める非保有国や反核非政府組織(NGO)が推進し、「核兵器禁止条約」が採択をみた。(ニューヨーク発 水川恭輔)

 交渉会議は、不参加だった保有国や「核の傘」の下にある国を意識しながら進んだ。被爆者の苦しみ、事故で爆発する危険…。前文に、どの国も否定できない非人道性や、核兵器が存在する以上避けられないリスクを刻み、核抑止力に頼る安全保障を根底から否定する内容になった。

 ただ、保有国が条約の廃棄義務を果たすなら、核兵器をなくす前でも加盟できるようにした。「保有禁止」との矛盾を指摘されながらも、条約の効果を高める狙いだ。核による安全保障から脱却し、抜本的な核軍縮へ共に前進しようという呼び掛けともいえる。

 現実には、段階的な核軍縮を主張する保有国に歩み寄りの気配はまだない。条約自体、時間的な制約で検証措置など詰まっていない部分がある。それでも、全ての国が守れば「核兵器なき世界」を実現しうる内容だ。国際社会と市民社会が条約をさらに育てれば、廃絶の扉を開く確固たる鍵になる可能性を秘める。

 条約に署名しない方針の日本政府は発効後、核抑止力への依存ぶりが国際社会で一層あらわになる。「同じ思いを誰にもさせてはならない」。被爆者が発し、条約に昇華したその訴えにしっかりと向き合うべきだ。

(2017年7月9日朝刊掲載)

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