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ヒロシマ「歴史的一歩」 核兵器禁止条約採択 ドーム前で歓迎集会

 原爆投下から間もなく72年。被爆地広島が、核兵器廃絶への「歴史的な一歩」に沸いた。核兵器禁止条約が米ニューヨークの国連本部で採択されたのを受け、反核平和団体が8日、広島市中区の原爆ドーム前で歓迎集会を開催。被爆者を中心に国内外で訴えを紡ぎ、手にした条約の重みをかみしめた。(長久豪佑、渡辺裕明、森戸新士)

 「地球規模の出来事。120を超える非核保有国に感謝したい。被爆者にとって大きな喜びであり、安堵(あんど)すら感じる」。広島県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之副理事長(75)=北広島町=はマイクを握り、感慨深そうに語った。条約の交渉会議に合わせて6月に渡米。ホワイト議長への約300万人分の国際署名の提出に立ち会った。

 あの原爆投下の翌日、父親を捜すため、母親、弟と市中心部に入り被爆した。北広島町原爆被害者の会の会長に就いた2005年から、「高齢の被爆者は人生を終えていく。一日も早く核廃絶を見たい」と運動の先頭に立ってきた。

 集会に先立ち、原爆慰霊碑で、先達たちに採択を報告した。「市民のうねりをつくり、核保有国や日本の政府の考えが変わるよう努力したい。これがスタートだ」と力を込めた。

 集会は二つの県被団協や市民組織など23団体が開催。約100人が歓迎のメッセージを記した横断幕を囲んだ。共同声明では、被爆者の苦難に言及した条約を「私たちが核被害の実態解明と救援に取り組んできたことの反映だ」と評価した。読み上げたのは「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」の森滝春子共同代表(78)。前夜から興奮で一睡もせず書き上げたという。

 父親は被爆者で原水爆禁止運動をけん引した県被団協初代理事長の森滝市郎氏(1901~94年)。「『やったよ』と報告した。本当に喜んでいると思う。ただ、『ふざけるな』と私以上に怒ってもいるでしょう。なぜ被爆国がここまで逃げるのか、と」。条約交渉に参加せず、署名もしないと言い切る日本政府の姿勢に憤る。

 「日本政府の態度は理解できない」。集会に参加したもう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(72)も非難した。「被爆国として条約に参加し、核保有国へも加盟を促す懸け橋の役割を」。被爆地の切なる訴えを、歴史的な日にも繰り返した。

(2017年7月9日朝刊掲載)

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