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廃絶の道筋 歓迎と期待 核兵器禁止条約採択 広島市民・観光客らの声

被爆者の思い継承 決意 日本政府の交渉不参加に批判も

 核兵器禁止条約の採択が日本で報じられた8日、広島市中心部では、市民や観光客から廃絶の道筋に光が差したことへの歓迎と期待が広がった。制定交渉に参加しなかった国への批判や実効性を問う声が上がる一方、被爆者の思いを受け継ぐ決意も聞かれた。(野田華奈子、森戸新士、伊藤友一)

 中区八丁堀交差点の大型ビジョンにはこの日午前、条約採択の電光ニュースが流れた。15歳の時、動員先の広島県海田町で見た原爆の閃光(せんこう)を記憶する安佐南区の新見富恵さん(87)は、「核兵器の使用は二度とあってはならない。制定されて良かった」と喜んだ。

 原爆資料館(中区)周辺では、核保有国を含めた外国人観光客らが廃絶への思いを深め、条約を巡る自国の姿勢に疑問の声も。

 今回の交渉に参加しなかった米国から訪れたアイオワ州の大学1年リキ・グローバーさん(19)は被爆者の遺品に向き合い、「核兵器廃絶に賛成する気持ちが強まった。米国が保有を続けることには怒りしか感じない」。オランダ・アムステルダム市の大学1年ヤダ・エイベルスマンさん(20)も「核の兵器利用はありえない。オランダが採択に反対したのは残念」と肩を落とした。

 一方、禁止条約に実効性を持たせるには課題が残る。オーストラリア・メルボルン市から観光で訪れた教員ベン・フレーターさん(34)は「条約には北朝鮮を含む全ての国が参加しないと意味がない」と指摘した。

 原爆ドーム前の集会に参加した県被爆2世・3世の会幹事の石本直さん(30)=東区=は日本政府の交渉不参加を批判。条約制定を求める署名に奔走した日々を振り返り「あくまで通過点。全ての核兵器をなくす運動をこれからも続ける」と気持ちを新たにしていた。

(2017年7月9日朝刊掲載)

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