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社説・コラム

天風録 「『非道』の烙印」

 核兵器禁止条約が採択されるや、米英仏3カ国が異を唱えた。安全保障の現実を無視した条約で署名の意思なし―と。抑止力で世界を牛耳ってきた地位はちょっとやそっとで棒に振れないのだろう。「歴史的な一歩」も行く手は心もとない▲だが、対人地雷禁止条約の例もある。やはり大国の不参加で実効性を危ぶまれたものの、使えぬ兵器となり、その備蓄数は目に見えて減った。国際社会の「見方を変える」効用は、意外とばかにならないのではないか▲何しろ核兵器に、人の道に外れた不道徳なものと烙印(らくいん)を押したのである。米英仏の非難も、もはや「守旧派」の難癖に聞こえてくる。既得権の岩盤を目の敵にしてきたわが首相は、ここでもドリル役を買って出るかと思えば、さにあらず。はてさて▲核兵器が非道となれば、原子力発電所に対する見方もなおさら厳しくなるだろう。核兵器の原料、プルトニウムの供給源となり得るからだ。「核発電所」と中国でも呼ぶようにこの際、原発の呼び名が見直されていい▲核大国が変われずとも、市民の側は変われる。広島、長崎両市長は平和宣言でどう語りかけるだろう。気付けば、原爆の日まで1カ月を切っている。

(2017年7月10日朝刊掲載)

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