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原爆献水の滝 きれいに 広島市西区 上流ダム定期清掃

 原爆の日に平和記念公園(広島市中区)の原爆慰霊碑にささげられる「原爆献水」の採水地の一つ、広島市西区己斐上の「滝の観音」で、水質をきれいに保つための取り組みが始まった。上流にある砂防ダムを定期的に清掃し、滝の水に汚れやにおいが生じるのを防ぐ。

 清掃しているのは、市内の団体職員や自営業者たちでつくる「献水の滝物語」。市内各地にある原爆死没者の慰霊碑に供養の献水を続けた被爆者の宇根利枝さん(2012年に93歳で死去)の顕彰などを目指し、昨年9月に発足した。

 活動の一つに、滝の水質調査と清掃を掲げた。滝の観音の上流に13年完成した砂防ダムに汚れが目立つようになったためだ。見た目に濁りは分からないが、水質への影響が気になった。

 メンバーたち約30人は5月上旬、ダムにたまった土砂をバケツリレーで運び出したり、ブラシでコンクリート表面のコケや草を取り除いたりした。

 広島国際学院大(安芸区)の竹野健次教授(環境科学)と県環境保健協会(中区)が水質を調査。藻の臭いや大腸菌の有無などに変化はなかったが、清掃前後で水の濁りが改善したことが分かった。

 今月上旬には、竹野教授とメンバーたちが現地を視察。検査結果を説明した竹野教授は「効果は確実に出ている」として、ダムの上流を清掃するとより改善効果が出ると勧めた。メンバーの森本美津子さん(49)=安佐南区=は「この水を飲ませてあげたかったと献水を続けた宇根さんの思いを受け継ぎ、できる範囲で少しずつ清掃をしていきたい」と語った。(村田拓也)

(2017年7月12日朝刊掲載)

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