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騒音・事故防止 徹底を 艦載機岩国移転 知事や市長 国に容認伝達

 岩国市の米海兵隊岩国基地への空母艦載機移転計画を巡り、地元の受け入れ容認を国に伝えた11日、村岡嗣政知事や同市の福田良彦市長は、騒音や墜落事故と密接に関わる米軍機の運用ルールの順守などを改めて国側に求めた。新たなリスクを抱える住民への配慮をにじませた形だが、市や県、国は、「極東最大級の米軍基地」と化す実態に即した対応ができるかが問われる。(松本恭治、和多正憲)

 「地元として移転を容認したい。住民の不安払拭(ふっしょく)に向け、安心安全対策などについて一層の取り組みを」。村岡知事はこの日、最後の訪問先となった外務省で岸田文雄外相を前にそう訴えた。続いて福田市長が要望事項について説明した。

 要望の中で触れたのが、岩国基地と市、県などで1971年に設立した「岩国日米協議会」での確認事項の順守だ。

 具体的には、市街地上空の飛行高度は4千フィート(1219メートル)とする▽滑走路運用時間(午前6時半~午後11時)外の使用は市に通報▽午後10時以降は(着陸直後に離陸する)タッチ・アンド・ゴーは禁止―など16項目。いずれも市民生活への影響に配慮したものだ。

 ただ同協議会は、規約で開催頻度を月1回としていたのを91年に「必要の都度」に変えて以来、一度も開かれていない。四半世紀を経て、「(基地)北側への2機以上の編隊離陸はしない」との項目は形骸化。そもそも確認事項に強制力はなく、あくまで米軍側の運用が優先される。

 艦載機が現在所属する米海軍厚木基地(神奈川県)では、外務省と在日米軍司令部などでつくる「日米合同委員会」で米軍機運用を巡る個別の合意事項を設けている。一方、岩国基地では、低空飛行訓練などは日米合同委の合意事項を踏まえるとするが、日常の運用については日米協議会での確認事項という「ローカルルール」(福田市長)に基づいているのが実情だ。

 この日の前日の10日夜、岩国市役所には、岩国基地周辺で激しい航空機騒音があったとの苦情が155件寄せられた。1999年以降では1日当たり最多の件数だが、米軍側は確認事項に基づく運用だったとしている。

 岸田外相との会談後、福田市長は日米協議会について、「近年正式には開いていないが、基地の関係部署や中国四国防衛局と連携しながら、実情に合った協議をしてきている。改めて協議会を開くかどうかはまた検討したい」と述べた。

<岩国日米協議会での主な確認事項>

安全上許す限り工場や市街地の上空を飛行しない
市街地上空の飛行高度は4千フィート(1219メートル)とする
滑走路運用時間(午前6時半~午後11時)外の使用は市に通報する
盆(8月13~16日)は飛ばないようにする 正月三が日は訓練をしない
午後10時以降のタッチ・アンド・ゴー等は禁止 着艦訓練は1週間前に市に通報し、原則午後9時以降はしない

(2017年7月12日朝刊掲載)

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