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平和を願い大空へ40年 被爆者の松本さん バルーン作り 一区切り

 「日本の凧(たこ)の会」(東京)会員で被爆者の松本興二郎さん(76)=広島市南区=が20日、安佐北区の落合東児童館前のグラウンドで、児童が平和を願って描いた絵などを添えた大型バルーンを揚げる。松本さんは約40年にわたって子どもにたこ作りを指導し、バルーンも手掛けてきた。しかし「高齢になり、大型バルーンは難しくなった。これで一区切りにしたい」と話している。(中川雅晴)

 バルーンは縦4・5メートル、横3メートル。黒のポリシートを張り合わせて袋状にし、熊のキャラクター形にした。同館を利用する小学校低学年の児童が書いた「平和」の文字や花の絵なども添えた。同館が20日午後3時から開く「平和の集い」で、布団乾燥機の熱風で膨らませて揚げる。本番に向け、14日に館内で試した。

 松本さんは、広島に原爆が投下されて2日後の1945年8月8日、疎開先だった飯室村(現安佐北区安佐町)から家族とともに入市被爆した。4歳だった。飯室中を卒業後、市内の紳士服を仕立てる会社などで働き、35歳ごろ独立。縫製業を営む傍ら、地域の子どもに趣味のたこ作りを教えてきた。

 毎年、市内を中心に児童館や公民館の行事に協力し、年計15回程度指導。ただ、大型バルーンは製作に時間がかかり、体力的に難しくなったため、今回で最後にする。たこ作り教室は依頼があれば続けるつもりだ。

 松本さんは「大空を見上げながら、戦争を知らない子どもたちに平和について考えてほしい」と願っている。

(2017年7月19日朝刊掲載)

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