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社説・コラム

社説 PKO日報隠蔽 防衛相は辞任すべきだ

 組織的な隠蔽(いんぺい)をただす立場の大臣が加担した格好だ。国会でも事実と異なる答弁を重ねていたことになる。稲田朋美防衛相は即刻辞任すべきではないか。

 南スーダン国連平和維持活動(PKO)部隊の日報を廃棄したとしながら陸上自衛隊が保管していた問題で、稲田氏は、保管の事実を非公表とする方針を伝えられて了承した。防衛省最高幹部による2月15日の緊急会議でのことだ。

 その2日前にも、陸自幕僚監部の幹部から日報の電子データが保管されていたという報告を受けていた。いずれも、複数の政府関係者が明らかにした。これまでの稲田氏の国会答弁や、説明とは全く異なっている。

 稲田氏自身はきのう、「隠蔽を了承したとかいう事実は全くない」と否定した。ならば陸自のケースを公表しなかった経緯や理由を説明する必要がある。

 統合幕僚監部に続き、陸自にも保管されていたことは1月に発覚した。統幕でのデータ保管は2月に公表したが、陸自での保管は3月に報道されるまで隠していた。非公表にしておく判断に、稲田氏は関わらなかったのだろうか。本人が言うように関与していなかったとしたら、大臣として省や自衛隊を把握できていなかったといえよう。ガバナンス(統治)やシビリアンコントロールの点で大臣失格ではないか。

 この問題では、防衛相直轄の防衛監察本部が特別防衛監察を進めている。近く公表される結果が待たれるが、第三者機関ではない身内の調査だけに、全容解明ができるのか不安が残る。

 稲田氏は、職責の重みをどれほど感じているのだろう。今月6日昼、九州北部の豪雨で福岡、大分両県に特別警報が出て自衛隊が約1600人態勢で救助活動などに当たっていたのに、1時間余り「政務」を理由に防衛省を離れた。危機管理を軽視しているとしか思えない。重責を担う自覚に欠けている。

 国内外とも多くの懸案を抱えているのが防衛相である。東アジアを見れば、自制を求める国際社会の声を無視して核・ミサイル開発を続ける北朝鮮、中国やロシアをにらんだ日米関係などの課題がある。国内では九州北部の豪雨をはじめ自然災害への対応や備えも求められる。責任を持って対応する気が稲田氏にあるのか、疑問だ。

 安倍晋三首相の「秘蔵っ子」といわれるように、重要ポストが次々あてがわれてきた。「将来の首相候補として頑張ってほしい」と持ち上げられたほどだ。そんな首相の任命責任も問わねばなるまい。

 これまでも、稲田氏の言動は再三問題になってきた。都議選の応援演説で「自衛隊としてもお願いしたい」と政治利用するかのような発言をしたことは、とりわけ深刻だった。歴史的な自民党惨敗や、内閣支持率の続落の一因にもなった。

 森友学園問題を巡っては、事実と異なる国会答弁をした。参院予算委員会で「(森友側の)顧問弁護士だったということはない。裁判を行ったこともない」と言い切ったが、後に答弁を撤回し、謝罪した。

 資質や能力については今分かったことではない。本人が辞意を表明しなくても、安倍首相は8月上旬の内閣改造まで引っ張らず即座に罷免すべきだ。

(2017年7月20日朝刊掲載)

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