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留学生と平和考える 本願寺派安芸教区 広島別院で恒例の集い・法要

 広島県西部の浄土真宗本願寺派安芸教区(543寺)が、広島市中区寺町の本願寺広島別院で毎年営む「平和を願う念仏者の集い」と「全戦争死没者追悼法要」に、宗門校の龍谷大(京都市)から留学生たちを毎年招いている。ことしは被爆死した米兵捕虜12人を調査、追悼してきた歴史研究家で被爆者の森重昭さん(80)=広島市西区=を講師に、敵味方を超えて慈悲の心で接する「怨親(おんしん)平等」の教えについて学んだ。(桜井邦彦)

 集いと法要は今月1日にあり、僧侶や門信徒約300人が参加。日本人を含めて10カ国・地域の学生23人も列席した。同派寺院の門徒である森さんは「被爆した米兵を通して平和を考える」と題し、交流のある遺族の悲しみを代弁。昨年5月に広島を訪れたオバマ米大統領(当時)と対面し、抱擁を交わした際の感動を語った。

敵味方超え供養

 「怨親平等」の具体的なエピソードとして、信心深い念仏者が広島で被爆死した米兵の遺体を原爆投下直後に埋葬したことや、2年後に広島別院の輪番がその遺体を火葬して原爆供養塔に納骨した―と紹介。「2人は、敵味方を超えて供養しようと考えられたのだろう」と思いをはせた。

 「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」とした国連教育科学文化機関(ユネスコ)憲章の前文も引用し、「昨今の世界情勢は怪しい感があるが、原爆だけは二度と使ってはいけない」と強調した。

 中国出身で龍谷大法学部4年の張健さん(28)は「戦争、核兵器は怖いもの」と受け止め、「もしも中国と日本の間に紛争が起きたら何ができるかを考えた。敵、味方と捉えず、人と人の関係の中での平和的な対話が最も大切」と話した。

 午後に別院本堂であった追悼法要で、仏前に花を手向け、阿弥陀経のお勤めで手を合わせた。続く法話では、被爆者で安楽寺(東区)の登世岡浩治前住職(87)から、原爆で弟を亡くした体験を聞き、「恨みに報いるに恨みをもってすることなかれ 恨みに報いるに 慈悲をもってせよ」という仏教の教えに触れた。

応募 定員の2倍

 集いと追悼法要は、次世代へ平和の尊さを伝える場として1994年から毎年続き、留学生もほぼ毎回参加している。経費は安芸教区と龍谷大が負担。2泊3日の滞在中は、教区内の僧侶や門信徒方にホームステイし、日本の家庭生活も体験する。これまでに日本を含めて42カ国・地域の405人が参加した。

 留学生には毎年人気のプログラムで、同大によると、ことしは定員の2倍の約40人から申し込みがあり選考したという。初日は、胎内被爆者の男性から話を聞き、平和記念公園(広島市中区)内の原爆ドームや原爆資料館を見学した。

 安芸教区の安部恵証・教務所長(65)は「現代も世界では戦争が起き、悲劇が続いている。ヒロシマでつないできた平和の願いを留学生の皆さんに理解していただき、各国へのメッセージの伝達者になってほしい」と期待していた。

 英国出身の交換留学生ブース・メガンさん(23)は「どちらが正しく、どちらが間違っているかは分からないが、罪のない人が犠牲になる戦争は心苦しく受け入れがたい」とし、「双方の反省が平和への一歩。私は作家を目指しているので、今回の学びを生かしヒロシマの願いを書きたい」と思いを新たにしていた。

(2017年7月24日朝刊掲載)

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