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[「9条加憲」を考える 中国地方の国会議員に聞く] 無所属 亀井静香氏(広島6区)

2項削除 戦力の規定を

  ―安倍晋三首相の提案した憲法9条の改正案をどう評価しますか。
 俺は憲法改正論者だけど、こんな木に竹を接ぐような提案は駄目だ。9条1項(戦争放棄)と2項(戦力不保持)を残したまま、自衛隊を書き加えるなんて分かりにくい。憲法は国家の基本法だ。そんな姑息(こそく)なことはやるべきじゃない。

 9条を改正するならば、侵略戦争はしないが自衛のための戦力は持つ、と正面から規定した方がいい。また、その内容を憲法学者ではない一般人でも理解できるよう分かりやすく書くべきだ。

  ―それは現在の2項を削るという考えですか。
 そうだ。1項は堅持するべきだけど、自衛のための武力行使まで、誤解して否定されかねないような文言は必要ない。「平和憲法」があっても、他国が攻めてきたら自衛の戦いはしなければならない。自衛隊が戦力じゃないというごまかしはやってはいけない。

  ―首相は2020年施行という目標期限を示して改憲を目指す考えです。
 内容だけでなく、タイミングも間違えている。今は改憲の機運が高まっているとは思えない。かつて民主党政権時代に、当時の鳩山由紀夫首相が米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題について決着時期の目標を示して失敗した。それを思い出す。客観的に見て、言うべき時期じゃないときに言っちゃった、という感じだ。

  ―かつて自民党の政調会長を担われました。自民党内での調整なく改憲案を発表した首相の手法をどう見ますか。
 国のリーダーが自分の考えをパッと打ち出すのはよくあることだ。米国のトランプ大統領やロシアのプーチン大統領もそうしている。リーダーが、下からの議論が煮詰まるのを待って政策を発表することなんてまずない。それは当然だが、中身とタイミングが駄目だということだ。

  ―自民党は「安倍1強」とされます。党内議論がどう進むと見ていますか。
 そもそも「安倍1強」とはいえない。自民党内にほかの有力な政治家がおらず弱者の中で浮かんでいるだけだ。「強」ではない。今の自民党は議論がない。所属議員は考える力を失い、発言する力と勇気もない。首相の案が党案としてまとまるかもしれないが、仮にそうなっても、国民の賛同は得られないだろう。

  ―なぜ、改憲が必要だと考えているのですか。
 現憲法は、自主憲法ではないからだ。大戦後に占領下で作られ、与えられた憲法だ。もし改憲するなら、9条以外では、国会議員を人口比ではなく、地域の代表者として選ぶよう変えるべきだ。(聞き手は野崎建一郎)

(2017年7月27日朝刊掲載)

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