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国際学生寮 老朽化でピンチ 改修資金 協力呼び掛け

広島で被爆 教授らが京都に設立

 広島で被爆した大学教授らの主導で、国を超えた人と人の相互理解を目指して1965年、京都に設立された民間の国際学生寮が老朽化し、改修資金の捻出に苦しんでいる。運営法人は「設立理念に縁のある広島の方々も含め、広く関心を持ってもらえたら」と呼び掛けている。

 京都市左京区聖護院東町にある公益財団法人「京都国際学生の家」。1カ国につき原則3人までの留学生と、全体の3分の1の日本人学生が共同生活する。現在はアジア、欧州、北米、アフリカ、オセアニアの13カ国・地域の20人と日本の12人が暮らす。

 在籍する大学や専攻、母国語、宗教、食文化もさまざまな寮生が委員会をつくって行事を営む。ロビーを開放し、各国の料理を紹介する祭りなども開く。

 設立を主導した一人が、京都大教授を務めた稲垣博さん(1925~2007年)だ。同大在学中に大竹市の化学工場に学徒動員され、45年8月、被爆2日後の広島に救援に向かい、入市被爆。被爆60年の05年に書いた回想記には、川面を埋める無数の死体に「狂気の世界」を感じ、二度と繰り返さないために何が必要なのか悩み抜いた体験をつづる。

 ドイツ留学を経て母校の化学研究所教授に就いた頃から、スイス出身で同志社大神学部で教えていた故ウェルナー・コーラー牧師らと、寮の建設に奔走する。東西冷戦が核戦争の危機もはらんで激化した60年代。若い世代が国や民族を超えて隣人として出会い、違いを認め合う場が不可欠と考えたためという。

 これまでに日本を含む81カ国・地域の973人が世界各地へ巣立ったが、完工して半世紀を経た鉄筋4階建ての寮(本館)は、耐震診断で基準を下回ることが分かった。本館改修だけで1億5千万円が必要とされ、募金運動を始めた。

 寮生委員会議長の同志社大大学院生、大西耕輔さん(27)は「国を超えた相互理解を言葉の上ではなく、日々の生活の中で試される貴重な場」と存続を願う。

 元寮生で現在、運営法人理事長の内海博司・京都大名誉教授(76)は「稲垣先生らが掲げた設立の理念は、今の世界にこそ極めて重要。力添えいただければ」と話している。国際学生の家☎075(771)3648。(道面雅量)

(2017年7月27日朝刊掲載)

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